高雄市内門区出身のシェフ、湯淯甯さんが11日、台北駐シンガポール代表処(シンガポールにおける中華民国大使館に相当)の梁国新代表(大使に相当)を表敬訪問した。湯淯甯さんは、より多くのシンガポールの人々に台湾の本場の宴会文化「辦桌(あるいは流水席)」を知ってもらいたいと話した。
「辦桌」とは、屋外にテーブルを並べ、大皿料理を楽しむスタイルの食事のこと。かつて台湾の宴会や披露宴には欠かせないものだった。「辦桌」シェフの一家に生まれた湯淯甯さんは、中学時代から家族について「辦桌」の手伝いをするようになった。長年の見聞と学習によって身に着けた腕前は、包丁さばきが見事なだけでなく、台湾の伝統である「辦桌」料理の神髄を十分に極めたものである。
「辦桌」シェフの一家に生まれたからといって、学業をおろそかにしたわけでもなかった。湯淯甯さんは働きながら大学に進学し、レストラン経営や飲食について実践と理論の基礎を学んだ。高雄市内門区の「辦桌」シェフによる技術と文化の伝承をテーマにした修士論文で、修士号の学位も手に入れている。論文では「辦桌」シェフや「辦桌」文化の変化と伝承について考察を加えた。
湯淯甯さんは「辦桌」シェフの文化発揚のため、2017年に初めてシンガポールに渡った。多角的なレストラン経営を行うシンガポールのトンロックレストラングループ(同楽飲食)でレシピ開発シェフを務める。シンガポールのリーシェンロン(李顕龍)首相が主催する国賓晩餐会で、台湾の「辦桌」料理を提供したこともある。こうした活躍が認められ、台湾で今年、「十大傑出青年」(基層労教類)に選出された。
湯淯甯さんは、「辦桌」シェフは高雄市内門区における重要な地方の産業であり、台湾独自のこの文化を継続し、伝承していきたいと考えている。