2025/05/16

Taiwan Today

文化・社会

絶滅したウンピョウか?目撃情報相次ぐ

2019/02/25
台東県達仁郷安朔村にある先住民族の集落である阿塱壹集落では、台湾で絶滅したと言われているウンピョウ(雲豹)の目撃情報が相次いで寄せられている。写真はウンピョウの標本。(中央研究院数位文化中心「典蔵台湾」より)
台東県(台湾南東部)南島社区大学発展協会の理事長を務める医師の高正治さんによると、台東県達仁郷安朔村にある先住民族の集落である阿塱壹集落(別名:安朔集落)は昨年6月、自分たちとゆかりのある土地、いわゆる「伝統領域」を守るための自主パトロール隊を立ち上げ、シフト制でパトロールを行っている。そうした中、2組のパトロール隊からそれぞれウンピョウ(雲豹)を目撃したという情報が寄せられた。
 
ある隊員の説明によると、樹上から下りてきた1頭のウンピョウが、山の上方に駆け上り、崖の上にいたヤギを捕獲した。それは驚くべき光景だったという。また、別の隊員の目撃情報によると、ウンピョウは走ってきたオートバイの前を走り抜け、あっという間に樹上に上り、姿を消したという。
 
阿塱壹集落では今年1月20日、集落会議を開き、先住民族集落が持つ「自然主権」に基づき、自らウンピョウを保護し、ウンピョウの生態について調査することを決めた。また、外部の人々による狩猟を禁止し、行政院農業委員会林務局(日本の林野庁に相当)に対して伐木など、集落の取り組みを阻害する行為を停止するよう求めることも決めた。同時に、南島社区大学(=地域の市民大学、カルチャーセンター)が活動支援のための募金活動を行うことを許可した。
 
台湾では2013年、ウンピョウの絶滅が宣言されている。しかし、「ウンピョウはまだ存在していると考える」と話すのは、集落会議に参加した著名な生態学者で、国立台東大学生命科学系(=学科)の劉炯錫教授だ。劉教授によると、ウンピョウは警戒心が強いため、人間が設置した罠にかかる可能性はきわめて低く、猟師1人の腕だけで仕留められるようなものでもない。このため過去20数年間にわたり、誰からも発見されず、捕獲されなかったのも当然だと指摘する。
 
林務局台東林区管理処の黄群策副処長は、阿塱壹集落でウンピョウの目撃情報が相次いでいることについて「非常に重視している」と話す。生態系の保護は林務局の主要な業務であり、数十年にわたって存在を示す痕跡が発見されてこなかったウンピョウについて、今回のように具体的な目撃情報が出たことは重視すべきであり、積極的に確認する必要があると述べている。
 
ウンピョウは台湾で、半世紀近くに渡って姿を消している。台湾では2013年、ウンピョウの絶滅を宣言した。しかし、ウンピョウは依然として台湾の生態系保護にとって指標的な存在であり、先住民族であるパイワン族の「聖霊」である。このため、林務局が今年1月19日に公告した『保育類野生動物名録(=希少野生動物種リスト)』の「一級保育リスト」には依然としてウンピョウの名前がリストアップされていた。
 

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