2025/08/03

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国家実験動物センターのアバターマウス、がん治療に一役

2019/04/03
大腸がん患者の腫瘍の組織検体を移植した実験用マウス。アバターマウスによる実験で、効果の高い抗がん剤を短期間で探し出し、患者の苦痛軽減や治療遅延をなくすよう期待がもたれる。(国研院提供、聯合報)
財団法人国家実験研究院(NARLabs、国研院)傘下の国家実験動物センター(National Laboratory Animal Center)は、人間の治験に代わりる実験用マウス「アバター(代役)マウス」を開発した。これで効果の高い抗がん剤を短期間で探し出し、薬の投与がより正確になるため、患者の苦痛が軽減され、治療遅延をなくすことが期待できる。
 
がんの発生メカニズムは複雑で、患者の遺伝子や飲食習慣、免疫力、薬歴はそれぞれ異なるため、同類の薬を同じ癌にかかる異なる患者に投与した場合、投薬の効果には雲泥の差があることもしばしばだ。国研院によると、現在の投薬方法は、経験的治療による投薬と同時に、体外で患者のがん細胞を使って薬物の抗がん効果についてテストを進めて、最も効果の高い薬を探し出している。
 
さらなる正確な抗がん剤の投与のための検査システムを確立するため、国家実験動物センターは、2015年に免疫系に欠陥があり、人間の組織を拒絶しない「高度免疫不全マウス(ASID)」の研究・開発に成功し、マウスへの腫瘍移植率を向上させた。
 
さらに国家実験動物センターは、今年に入って、この高度免疫不全マウスに患者の腫瘍の組織検体を移植して、患者ごとに効果のある薬物検査の研究・開発に成功したアバターマウスが誕生した。アバターマウスは、患者ごとの腫瘍特性を維持しながら分析を進めることができ、経験的治療の期間中に、標的治療のための薬物検査を進めることができ、それぞれの患者に対して最もふさわしいがん治療法を探し出すことができる。これは、がんの個別化治療時代の幕開けともいえる。
 
アバターマウスは、患者に替わって抗がん剤を受けてその効果を検査できると言っても、経験的治療の期間中に治療薬を特定するには、検査にさらなる時間が必要になる。しかしもし、同じ癌にかかる多くの患者の腫瘍検体を事前に採取・保存していれば、新たな患者の腫瘍検体との分析・比較が可能になり、効果の高い治療薬を特定する時間が短縮でき、患者の苦痛軽減や治療遅延をなくすことにつながる。
 
そのため国家実験動物センターは、国立成功大学(台湾南部・台南市)と提携して台湾初となる「がん患者の組織バンク(Patient-Derived Xenograft bank)」を設立した。アバターマウスに移植した人間の腫瘍組織を大量に培養して冷凍保存し、データバンクを作った。患者のがん組織バンクでは、今後の研究や薬剤選定に役立っている。
 
国家実験動物センターは2017年8月から、台湾南部で発症率の高い大腸直腸がんや肝臓がんなどの検体を成功大学の病院から採取し、実験用マウスに腫瘍組織を移植し、培養、冷凍保存を行った。患者のがん組織バンクには現在、10種類以上の腫瘍と120以上の検体が保存され、ウェブサイト上で申請のあった各学校や研究機関の研究グループへ情報を提供している。

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