2025/04/25

Taiwan Today

文化・社会

新北市の人口が400万人突破、「異郷」を「故郷」にした「移民」たちが市の活力に

2019/05/03
台湾で人口の最も多い都市は台湾北部の新北市。このほどさらに400万人の大台に乗った。新北市は「典型的な移民都市」で様々なエスニックグループの特色が集まっており、まさに台湾社会の縮図である。写真は同市の板橋駅。(中央社)
台湾で人口の最も多い都市は台湾北部の新北市。台湾初の300万都市として知られていたが、このほどさらに400万人の大台に乗った。新北市は「典型的な移民都市」。様々なエスニックグループの特色が集まっており、まさに台湾社会の縮図だと言える。
 
新北市の侯友宜市長は1日、市政会議の席上、4月27日に新北市にとって400万人目の市民が戸籍登記したと宣言した。同市新荘区に住む14歳の女の子で、母親はベトナム国籍だという。台湾の父親と共にベトナムから新北市に移り住んだ。新北市は2010年にそれまでの「台北県」から行政院(内閣)直轄市に昇格、名称も「新北市」に改められた。現在、直轄市は6つ。新北市はもちろん最大の直轄市である。新北市がこれほど人々を引き付けるのには、環境的な要素と客観的な優位性がある。
 
清の康熙帝の時代(1661~1722)、中国大陸から大量の漢民族が台湾本島に渡って来て開墾に努めたことで、現在の台北市・新北市・基隆市のいわゆる「大台北地区」の開発が加速した。大規模な水利施設を漢民族と先住民族、地主と小作農、資本家と労働者が協力して整備し、盆地周辺の里山と丘陵も開発、さらに物産と貿易会社が結びついて輸出も行ったことが人口の増加と豊かな経済を実現した。
 
また、新北市には康熙帝の時代にやって来た人たちのほか、台湾の中部と南部から生活のため早くに移住してきた人たちも多い。これらは中国大陸から台湾中南部にやってきた閩南系(福建省一帯)の人たちの子孫である。
 
こうした移住者で、新北市で働く人、そして起業する人はほとんどが大漢渓の北側及びその周辺に集まった。1960年代には輸出主導型の経済政策の下、繊維、食品、プラスチック、電子部品などの民生工業が台頭、こうした産業が県・市を結ぶ主要道路である省道縦貫線(台一線)の通る新荘区、三重区、板橋区などに集中したのである。
 
一方、大漢渓の南側である中和区、永和区、新店区で暮らすのは1949年に国民政府と共に中国大陸から渡って来た中国大陸出身の人々とその子孫(合わせて「外省人」と呼ばれる)が主だったが、近年はそうした特色は薄まっている。現在、中和区などでは台湾の人と結婚して台湾に移り住んだ海外籍の人たち(「新住民」と呼ばれる)も多く、多元的なコミュニティが築かれている。
 
台湾が急速な経済成長を遂げた時代、台北市と同市をドーナツ状に囲む台北県(現在の新北市)には大量の人々が流入した。台北県内の多くの「郷・鎮」(末端の行政区分)は人口の増加により、県の管轄する「市」に昇格した。内政部(日本の省レベル)戸政司の統計によれば、新北市の人口は1966年に100万人を突破、1980年末には225万8,000人に達し、台北市を抜いて台湾最大の都市となった。そして1990年5月、300万人を超えたのである。現在、新北市と同じく行政院直轄市の台中市(台湾中部)の人口は約280万人。高雄市(同南部)が約277万人。台北市は約266万人。台南市(同南部)が約188万人であり、このほど400万人を突破した新北市がいかに飛び抜けているかがわかるだろう。
 
労働力と雇用機会はスパイラル的に人口の成長につながる。新北市は台湾で労働者数が最も多い。また、「新住民」人口も9万7,000人あまり。さらに「新住民」の子女と外国からの出稼ぎ労働者も10万人近くで、「新住民」と合わせると20万人を超える。すなわち台湾で広義の「新住民」が最も多い都市でもあるのだ。
 
いつの世も「逐水草而居」(水と草を求めて移動する)は人々が移り住んだり、移動したりする主な原因。豊富な生活資源があるところに人々は移っていく。現代では「経済発展」がさしずめ「水と草」である。そこに雇用機会が多く、待遇の良い仕事があり、ビジネスの可能性があれば、人々はそこに移り住んで定住しようとする。新北市は直轄市に昇格して以来、商業の発展を重視してきた。台北市と経済的に密接な関係にあり、住居などの面でも大都市の機能を部分的に担える「衛星都市」としての性格を持つ中、新北市における大型のビジネス誘致件数、並びに事業(工場)登記件数はほぼ毎年台湾全体で最も多い。豊富で多元的な雇用機会とビジネスチャンスを創り出す新北市の人口が増え続けているのは自然な現象なのである。
 
人口400万人突破を受けて新北市の侯友宜市長は、行政が目指すのはこれからも「安居楽業」(安心して暮らせ、楽しく働けること)だとし、区をまたいだ交通機関のリンク強化、教育と生活のクオリティ向上、新北市立土城病院建設など医療資源充実の加速、託児所や高齢者施設の強化、若者の住宅問題の解決に力を入れていく方針を示した。こうした取り組みにより、人々が雇用機会、給与水準、生活の利便性をそれぞれ比較慮した上で、就職と生活、将来の発展のために新北市を選ぶようにしていくという。数百年前に中国大陸から渡って来た人たち、中南部から移り住んだ人たち、そして「新住民」。新北市にやって来たこれら「移民」たちはみな労働のエネルギーであり、イノベーションの活力でもある。そして「第二の故郷」が発展するための新たな力になっているのである。
 
 

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