台湾の最高学術研究機関、中央研究院の院士(フェロー)で、台湾における「ウシエビの父」と呼ばれる廖一久(リャオ・イーチュウ)さんが29日、日本の東京で日本経済新聞社主催の「日経アジア賞(NIKKEI ASIA PRIZES)」を受賞した。ウシエビ(中国語では「草蝦」)はブラックタイガーという名で広く知られるエビ。
「日経アジア賞」は毎年、科学技術、経済、文化・社会の3部門で個人もしくは団体に賞を贈り、受賞者がアジアの発展と安定並びに地域の建設のために果たしてきた功績を称えている。廖さんは科学技術部門で受賞。
廖一久さんは今回、日本の三重大学の吉松降夫教授から推薦されて同賞を獲得。審査員の1人である日本の理化学研究所の松本紘理事長によれば、廖一久さんは台湾に貢献したばかりでなく、アジア及び日本に大きな発展をもたらした。特に廖さんは自らの研究成果である養殖技術を包み隠さずアジアの水産業者に伝授するなど、まさに「アジアにおける水産養殖の父」と呼ぶにふさわしい。
松本理事長は、日本人が今、ブラックタイガーやオニテナガエビ(中国語では「泰国蝦」)、そしてカラスミを食べられるのはいずれも廖一久さんのおかげだと称え、審査では満場一致で廖さんの受賞が決まったと説明した。カラスミはボラの卵巣を塩漬けして乾燥させたもの。廖さんはボラの養殖でも実績を上げている。
廖一久さんは82歳。日本で生まれたが4歳の時に両親と共に台湾に戻った。台中市(台湾中部)の豊原区で育ち、1962年からは東京大学に留学して農学博士号を取得。1968年に台湾に戻って台湾省水産試験所(現・行政院農業委員会水産試験所)で働き始めると、1年も経たないうちにウシエビの人工種苗生産に世界で初めて成功、同水産試験所東港分所(現・行政院農業委員会水産試験所東港生技研究中心)をアジア屈指の養殖研究センターへと育て上げた。
廖一久さんは現在、世界科学アカデミー(THE WORLD ACADEMY OF SCIENCES for the advancement of science in developing countries, TWAS)と中央研究院のフェローで、国立台湾海洋大学(台湾北部・基隆市)の終身ディスティングイッシュトプロフェッサーでもある。2014年には日本政府より旭日中綬章を受章。2017年には日本水産増殖学会の名誉会員となった。
廖一久さんの妻の趙乃賢さんも東京大学で博士号を取得、行政院農業委員会(日本の農水省に相当)水産試験所初の女性「技正」研究員である。「技正」は技術官のこと。趙さんは台湾の水産研究界における低温生物学の専門家で、2人は水産試験所での同僚として、二人三脚で人口養殖技術研究のため多大な貢献を果たしてきた。