「ニューヨークタイプディレクターズクラブ」(Type Directors Club, TDC)は様々なフォント(字体)とそのレイアウトのデザインを評価する専門団体で、同団体が行うコンクールは世界の重要なグラフィックデザインコンペティションの1つとなっている。コミュニケーション・デザインとタイプ・デザインの2部門が設けられており、一般グループと学生グループのコンペティションには毎年、世界各地から数多くの作品が集まる。また、受賞作品はその年、世界各地で開催されるTDC展で紹介される。
国立台湾科技大学(台科大、台湾北部・台北市)の大学院でデザインを学ぶ許智偉さん、蘇筱雯さん、林辰蔚さんは鄭司維副教授の指導の下、カレンダーとしおりがセットになった「未命名資料夾(Unnamed Folder-Calendar)」をデザイン。特殊な印刷技術によって様々な色彩を実現したほか、変化に富んだレイアウトを組み合わせることで四季それぞれのムードの違いに合わせてみせた。同作品はTDCの学生コミュニケーション・デザイン部門(Student Communications Design)で銀賞(Second Place)を受賞してすでに商品化、200セット限定で販売されたという。
許智偉さんは、この作品はステンシル印刷と印刷後の様々な加工を用い、蛍光色など一般の印刷工場では出すことの出来ない特殊な色彩を実現しており、それに四季をテーマに色を組み合わせることでそれぞれの季節の異なる趣を表現したと説明。また、カレンダーのレイアウトでも毎月違う図形と色彩を使用することで、新たな1年における未知の可能性と、未来に対して期待に満ちあふれている気持ちを表したのだという。
この作品は元々、国立台湾科技大学でデザインを学ぶ大学院生の選択科目である「ビジュアル・コミュニケーション・デザインの起業実務」で制作されたもの。この授業で学生たちはデザイン、製品の制作、実際の販売を行わなければならない。そのプロセスにおいて学生たちは製品の位置づけ、客層の開発、価格設定とコスト管理などを学んでいく。デザインのみならず、デザインでビジネスを立ち上げるための実務をいっそう理解することが出来るという。許智偉さんは、多くの人たちがこのカレンダーを買ってくれたことに感謝すると共に、同カレンダーが世界各地で展示されることが楽しみだと話している。