2025/08/08

Taiwan Today

文化・社会

仏ポンピドゥー・センターの「コスモポリス♯2」、台湾の芸術家8人が出展

2019/10/22
フランスのポンピドゥー・センターが2年に1度行う文化イベント「コスモポリス」に今年は台湾から8人のアーティストが招きに応じて参加。インスタレーションや映像などが展示される。写真は陳彦斌さんの作品。先住民族の宴会の場を再現し、異なる人々の交流を促す。(陳彦斌さん提供、中央社)
フランスのポンピドゥー・センターが2017年にスタートさせた2年に1度の文化イベント「コスモポリス」の2回目、「コスモポリス♯2(Cosmopolis #2, Repenser l''Humain)」展が今月23日から12月23日まで開催される。同イベントではテーマに沿った講演、インスタレーションの展示、パフォーマンスアート、座談会、音楽会、映像とドキュメンタリーの上映及びワークショップなど様々な活動が行われる。
 
今年は「人類についての再考」がタイトルとなっており、ポストヒューマニズムであると共にテクノロジーが日々進化する現代社会において、科学の理性と技術の進歩をイデオロギーとした現代文明とその社会価値観の下では弱者となってしまう人々に対する搾取と彼らに強いる苦役について改めて考えてもらおうとする。
 
今年は台湾から林其蔚さん、陳彦斌さん、許家維さん、張恩満さん、高俊宏さん、馬躍・比吼さん、走路草農/芸団工作室の陳漢聲さんと劉星佑さんら8人のアーティストが招かれた。
 
20年来、世界各地で音声の作品を発表してきた林其蔚さんは台湾の寺や廟での儀式で聴くことのできる呪文や吟唱、並びに20世紀初頭のダダイズムと未来派の人々の声や詩、舞台芸術などからインスピレーションを得るという。林さんは会場で無作為に観客と交流する。また観客を作品に参加させるなどして作品を解釈する権利とその広がりを観客に委ね、芸術の文脈を共に創り上げていく。
 
「原住民」(=先住民)文化に長く関わる陳彦斌さんはポンピドゥー・センターに集会所を設けた。台湾の先住民族、アミ族の巴格浪(Pakelang)の風習からアイデアを得ているが、先住民族を示すマークやシンボル、装飾、音楽と踊り、儀式などの固定観念は超越。陳さんは没入型の環境設計と行動での接触で、異なるグループの交流を美術館の公共スペースで実現させる。巴格浪(Pakelang)とはアミ族の行う宴会で「打ち上げ」に類似した活動。
 
芸術を実践する上で映像創作の背景にある行動性を重視する許家維さんは、映像以外の事柄に着目することで、歴史では触れられない人々、モノ、土地の関係をあぶりだす。今回の「コスモポリス♯2」で展示する2点のビデオ作品は、日本占領時代の台湾における2つの鉱山開発計画を中心としてサイエンスの角度から殖民統治の歴史を検証するもの。
 
張恩満さんは台湾南東部の台東県で生まれ、同北部の台北市で働き、暮らしている。張さんは今回、ドキュメンタリーフィルムに、これまで口述で伝えられてきた物語を自ら整理したものを加え、従来は食べ物のあるところを移り住みながら狩猟で生計を立ててきた先住民族たちが、多様性の尊重を声高に唱える現代社会の異なる法治体制下では無法者になってしまうことについて問いかける。
 
ビデオや身体を使ったパフォーマンス、執筆を創作のメディアとする高俊宏さんは今回、ビデオ作品を出展。作品のきっかけはある山地で起きた乱開発事件。海蟾法師を祀る廟が違法建築だったため摘発を受けて解体されるが、残った荒地が精神と資本、土地開発の欲望が入り組んだ構造を象徴する地になってしまうことを風刺した物語だという。
 
独立系のプロデューサーで30本以上のドキュメンタリー作品を残し、多くの受賞経験を持つ馬躍・比吼さんの今回の作品は、現代社会における先住民族集落の文化と歴史の位置づけを観客と共に探ろうとするもの。
 
そして陳漢聲さんと劉星佑さんによる走路草農/芸団工作室は、家族が受け継いできた農業経験と、農業は本来人間と自然が調和する哲学だという考えから出発し、芸術の可能性を改めて考えようとするものだという。
 
 

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