2025/05/14

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文化・社会

高雄市立美術館でタトゥー展、仏ケ・ブランリ美術館とのコラボで

2019/11/01
高雄市立美術館(台湾南部・高雄市鼓山区)で現在、タトゥー(入れ墨)をテーマとする展示会「TATOO刺青―身之印」が行われている。仏ケ・ブランリ美術館とのコラボによるイベント。写真手前はシリコン製のインスタレーション。左はトライバルタトゥーの祖と呼ばれるアメリカのレオ・スルエタ(Leo Zulueta)さんの作品。右は高雄出身の彫師、楊金祥さんが手掛けたもの。(自由時報)
高雄市立美術館(台湾南部・高雄市鼓山区)で現在、タトゥー(入れ墨)をテーマとする展覧会「TATOO刺青―身之印」が行われている。2014年から2015年までフランスのケ・ブランリ美術館で行われたのを皮切りに、カナダのトロント、米国シカゴ、ロサンゼルスなどでも巡回展示され、各地で高い評価を得たものだ。これまでの参観者は延べ150万人に達している。このほど高雄市立美術館とケ・ブランリ美術館が協力し、台湾での展覧が実現した。
 
展覧会では、ケ・ブランリ美術館の所蔵品のほか、トライバルタトゥーの祖と呼ばれるアメリカのレオ・スルエタ(Leo Zulueta)さんや高雄出身の彫師、楊金祥さんが手掛けたタトゥーのシリコン作品などが展示されている。特に楊金祥さんの作品は、東洋文化を構成する寓話、歴史、宗教などの伝統要素が盛り込まれており、自身も「アジアの伝統的スタイル」と称しているものだ。
 
この展覧会は人類史上初めて行われる、タトゥー(入れ墨)芸術の歴史を振り返るものとなっている。エリアは5つに分けられ、合計200点の作品が展示されている。人類5000年の歴史におけるタトゥー(入れ墨)の変遷と、変わらずにあるものが理解できる。高雄市立美術館がケ・ブランリ美術館とコラボするのは初めてのことで、今回の台湾での展示ではさらにローカルな視点を加え、オーストロネシア語族の入れ墨文化と現代のタトゥーの現状にも触れている。
 
最初のエリアは「従全球到辺縁(=FROM THE GLOBAL TO THE MARGINAL)」で、さまざまな国々におけるタトゥーの変化を紹介している。例えばヨーロッパでは19世紀まで、タトゥーは犯罪者のしるしだった。また、15世紀の大航海時代、タトゥーを入れることができるのは船乗りや冒険家だけに許され、植民政府の多くはタトゥーを厳しく禁止していた。興味深いのは19世紀初頭のヨーロッパにおいて、タトゥーが個人を表現するためのアンダーグラウンドの言語になってしまったということだ。タトゥーは主流に対抗するための行為となり、ダウンタウンや刑務所、パフォーミングアートの世界へと流れていった。
 
二つ目のエリアは「運転中的芸術(ART IN MOTION)」で、タトゥーの芸術への生まれ変わりについて展示している。欧州、アジア、北米でタトゥーに関する技術や芸術価値における交流が進み、また1891年にアメリカのサミュエル・オーレイリー(Samuel O’Reilly)さんがタトゥーマシンを発明して以来、タトゥーの技術が飛躍的に発展し、広く普及するようになった。このエリアでは、イギリスのブリストルで初めてタトゥーアーティストによるクラブが組織されたことも紹介されている。
 
三つ目のエリアは「脱胎換骨:伝統刺青的復興(MAKEOVER:REVIVAL OF TRADITIONAL TATTOOING)」である。日本以外のアジアや太平洋の国々では18世紀以降、植民化やキリスト教化、社会変革等の影響を受け、タトゥー文化が切り捨てられるようになった。しかし、1980年代以降、先住民族のタトゥーに海外から関心が寄せられるようになり、伝統的なタトゥーが見直されるようになっている。
 
最後の「今日刺青 (TATTOO NOW)」のエリアでは、各国のタトゥーが紹介されている。例えば日本スタイルの入れ墨、米国のオールドスタイル、ロシアの刑務所の囚人たちに見られる荒々しいタトゥー、ヨーロッパスタイルの「渋みのある」タトゥーなどだ。
 
展示は写真、絵画、動画、彫像、インスタレーションなどによって構成されており、まるで人類学の洗礼を浴びるような、ある種の衝撃を受けることだろう。2020年2月9日まで開催中。
 

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