2025/05/10

Taiwan Today

文化・社会

珍しい姓が集中、高雄市内門区では「机」・「買」・「力」も姓

2019/12/06
台湾南部・高雄市内門区は珍しい姓が集まっていることで知られる。写真の男性は、「買」順発さん。発音の関係で、子どもたちの名前も姓と一緒にすると何か買い物をしているように聞こえるという。(聯合報より)
台湾南部・高雄市内門区は珍しい姓が集まっていることで知られる。内門区の人口は約1万5,000人で、多くの姓が他の場所ではほとんど見られない。旗山戸政事務所(戸政事務所は戸籍事務を処理する機関)の調査によると、内門区には、「兵」、「力」、「机」、「姫」、「卯」、「候」、「毒」、「蘭」、「東」、「鄂」、「宜」、「寧」、「月」、「来」、「買」、「油」、「邦」などの特殊な姓があり、こうした姓は主に同区の内興里、木柵里、三平里、永富里、溝坪里に分布している。
 
「買」を名乗る家族が溝坪里に住んでいる。買順発さんの3人の子どもはそれぞれ藝萍さん、藝菁さん、立龍さん。名前だけならおかしくないが、姓と一緒にして3人の名前をつなげて読むと、「買一瓶、買一斤、買一籠」(1瓶買う、1斤買う、1カゴ買う)に聞こえてしまう。
 
父親の買順発さんは、「買」を台湾語で読むと発音が「馬」に似ていることから「馬さん」と誤解されるので、初めて会った人にはいつも説明せねばならないと話す。また、「『買』が姓になっているとはすばらしい。黄金でもダイヤモンドでも、何でも買えるだろう」とうらやむ人もいるという。
 
内門区に珍しい姓が多いことは、台湾の先住民族・西拉雅族(=シラヤ族。中央政府は未承認。台湾南部・台南市は認めている)の「頭目」(リーダー)だった大里撓と関係がある。清の時代、乾隆年間に「黄教之乱」が発生した。ある盗賊があちこちで牛を盗み、現在の台南市新化区で暮らす人々を不安に陥れた。シラヤ族の「頭目」だった大里撓は清に協力して盗賊を襲撃、平定に成功したことで乾隆帝より「戴」という姓を授かると共に、「六品官」の位を得た。大里撓はシラヤ族の仲間たちを連れて現在の内門区三平里に移住、土地を33区画に分割した上で開墾して定住した。ここから「横山宋江陣」が生まれている。「宋江陣」は武術と芸術を融合した伝統芸能。「横山宋江陣」は、平地で暮らした先住民を意味する「平埔族」による「宋江陣」として知られる。シラヤ族も「平埔族」に分類される。
 
大里撓が姓を授けられたことから、シラヤ族の仲間たちも姓がもらえるようにと要求。その後、「平埔族」の言葉を中国語に訳したことで、「力」、「机」、「姫」、「卯」、「候」、「毒」、「蘭」、「藍」、「東」、「買」などの特殊な姓が数多く生まれたのだという。
 
大里撓は死後、現在の内門区に葬られた。墓地は広大だったが二十数年前の整備で大幅に縮小された。また、200年あまりの歴史を持つ従来の墓碑は盗まれ、転売されたことがある。しかし手に入れた人が切り分けようとしても、機械が故障を繰り返したことで最後は元の場所に戻すしかなかったという。このエピソードは地元の人たちによって不思議な話として語り継がれている。
 
内門区における「平埔族」の人たちには祖先の霊「阿立祖」に対する信仰が残っており、家の外や応接間、家の端にある部屋で徳利のような器を立てて太祖(阿立祖のこと)を祀る人が多い。普段はビンロウやタバコを供えている。毎月の旧暦1日と15日には水を新しいものに換え、太祖の誕生日とされる旧暦6月16日には豪華なお供えをしてお祭りを行っている。
 
 

ランキング

新着