2025/05/24

Taiwan Today

文化・社会

文化部、刺繍職人の劉千韶さんら合計6名を「人間国宝」に認定

2020/01/09
文化部は、左上から右に「刺繍」劉千韶さん、「緙絲」黄蘭葉さん、「伝統木彫」陳啓村さん、左下から右に「纏花」陳恵美さん、「歌仔戯(ゴアヒ)」王仁心(芸名:王金桜)さんと陳鳳桂(芸名:小咪)さんの6名を国の無形文化財の保持者(人間国宝)に認定した。(文化部サイトより)
文化部(日本の文部科学省に類似)はこのほど、2019年「伝統工芸審議会」で「刺繍」、「緙絲」、「纏花」の3項目を国の無形文化財の「重要伝統工芸」のカテゴリーに含めると共に、それぞれ「刺繍」劉千韶さん、「緙絲」黄蘭葉さん、「纏花」陳恵美さんを無形文化財の保持者に認定した。同時に、国の無形文化財「伝統木彫」において陳啓村さんを、「歌仔戯(ゴアヒ。台湾オペラ)」において王仁心(芸名:王金桜)さんと陳鳳桂(芸名:小咪)さんを保持者に認定する公告を行った。国の無形文化財の保持者は一般に「人間国宝」と呼ばれる。これにより、台湾における「人間国宝」は、「重要伝統工芸」13項目で18名、「重要伝統表演芸術」18項目で24名となった。このほど新たに認定された「人間国宝」の詳細は以下のとおり。
 
【刺繍】劉千韶さん
刺繍は台湾の女紅(女性によるモノづくり)文化を代表する技芸であり、針の運び方、材料、構図の美しさを表現するもの。刺繍糸によって作られるライン、図案、ステッチ、特殊な技巧の中に、職人のデザイン能力や創作能力が反映される。劉千韶さんはこの世界で40年以上の経験を持ち、刺繍工芸の知識、技芸、文化の表現方式を熟知し、且つ正確にこれらを体現している。その作品は過去にいくつもの賞を獲り、招待を受けて展覧会に出展したこともある。刺繍工芸の世界で抜きんでた存在であり、台湾における日本式刺繍という文化継承の代表的人物だ。
 
【緙絲】黄蘭葉さん
「緙絲」とは中華文化におけるシルクタペストリー、織物のこと。長い歴史を持つ工芸品で、その起源は7世紀半ばに遡ることができる。日本では1970年代、人件費が高騰。コスト削減と市場のニーズに合わせ、西陣織(つづれ織り)の代理生産を台湾に委託するようになった。これが日本の綴れ織りを台湾に根付かせ、台湾の「緙絲」に生命力を与えることになった。黄蘭葉さんは40年以上に渡って「緙絲」を作り続けており、つづれ織りの技法を熟知している。また、絹糸の染料として、柳の木、スオウ、ビンロウの茎、コーヒー豆等の植物を使うなど、これまでにない新たな試みに挑戦し、新たな世界を切り開いている。これは、日本の綴れ織りが台湾の職人の手によって台湾化し、根付いていることを意味している。
 
【纏花】陳恵美さん
「纏花」とは台紙に糸を巻き付けて作る造花のこと。台紙を切る、糸を巻きつける、ひねる、刺繍をするなどの技巧を組み合わせた工芸。台湾人の日常生活において、人生の節目の祝福と密接な関係のある伝統工芸であり、漢民族のグループにおける祝福や祈願の文化的表現でもある。象徴的意味と芸術としての価値を豊富に持ち合わせている。陳恵美さんは、謝陳愛玉さんに師事し、閩南地方で「春仔花」と呼ばれるこの「纏花」の技法を学んだ。初期の作品の技法やスタイルは台湾北部を中心とするスタイルで、その後、客家(ハッカ。台湾第2のエスニックグループ)の「纏花」、金門(離島)の「吉花」など、それぞれのスタイルを取り入れると共に、独自の創作スタイルも生み出していった。陳恵美さんは、台湾北部に伝わる「春仔花」の8つの花型と、台湾中部・彰化県鹿港に伝わる4つの花型を合わせ、合計12の花型を使って学生たちを指導している。また、「纏花」の手順である「工料」、「工具」、「工法」、「工序」の4つを整理し、且つ「纏花」に関するさまざまな技法や組み合わせに名前を付け、台湾における「纏花」の基本的な教学内容とレベルを判断する基準などを構築した。
 
【伝統木彫】陳啓村さん
神仏彫刻の派閥の一つ「福州派」の林依水さんに師事し、「福州派」を代表する有名仏具店「人楽軒」でその腕を磨いた。「粧仏」と呼ばれる伝統的な神仏彫刻や、漆や「粉線」と呼ばれる伝統工芸を使った装飾に長けており、台湾南部・台南市を代表する「福州派」の特色をふんだんに反映した作品を生み出している。伝統の木彫技術をベースに、現代的なスケッチ、彫塑、美学理論などを吸収し、人物の表情、衣服の模様、ポーズなどを見事な彫刻刀さばきで表現する。洋の東西の学習方法を融合し、伝統を進化させ、伝統の中に現代的要素が入り混じった作品を作る。
 
【歌仔戯】王仁心(芸名:王金桜)さんと陳鳳桂(芸名:小咪)さん
王仁心さんは、台湾の歌仔戯を代表する「旦角(=女役。男性が演じることもある)」のベテラン役者。屋内舞台、売薬団(=薬売りの行商一座)、ラジオ、テレビ、劇場などで演じ、歌仔戯の発展の歴史と共に歩んできた。さまざまな演目の「四句聯(=7字或いは5字の組み合わせを1句とし、4句で構成されるセリフ回し)」を使いこなす。「四句聯」の吟唱や発音の研究にも熱心で、文化の伝承において非常に重要な価値を持つ。
 
陳鳳桂さんは、歌仔戯の世界で広く活躍する役者で、生(=男役)、旦(=女役)、丑(=道化役)などさまざまな役柄を見事な解釈で演じる。「一人千面(=一人でさまざまな役柄を演じること)」の才能を持ち、生、旦、丑といったさまざまな役柄をしっかりと演じ分けることに成功した役者である。
 

ランキング

新着