大動脈弁とは、心臓の血液を全身に行きわたらせるための扉とも言えるものだが、社会の高齢化が進み、大動脈弁狭窄症の患者が増加している。老化によって引き起こされる大動脈弁狭窄症は65歳以上に多くみられる。統計によると65歳以上の2%に大動脈弁狭窄症が見られ、85歳以上になるとこれが4%に達する。
陳姓の高齢男性は5年前、102歳のときに大動脈弁の異常が見つかり、大動脈弁狭窄症の最新治療法「経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)」を受けた。この手術を行った台湾北部・台北市の振興医療財団法人振興医院によると、世界の医学報告を見ても、「TAVI」を受けて現在も存命中の患者の最高齢は104歳で、陳さんはこの記録をはるかに上回る。また、陳さんは術後の回復も早く、現在では簡単な畑仕事ができるまでになっている。振興医院によると、台湾ではこれまでに約2,200人が「TAVI」を受けている。
陳さんには80代の娘がいる。陳さんと同じ症状を持ち、3年前に「TAVI」を受けた。振興医院によると、これまで大動脈弁狭窄症の唯一の治療法は開胸手術(弁置換術)とされていた。しかし、高齢患者は体力の低下や手術のリスクが高いなどの理由で、「治療を断念」するケースが多かった。
「TAVI」は、折り曲げ可能な人工弁を細いカテーテルの中に入れ、大腿動脈を使って大動脈弁の位置まで送り込み、「つぼみが瞬時に花開くように」開くことで、病変のある大動脈弁を人工弁に置き換えるというもの。
これまで85歳以上の高齢患者は大動脈弁狭窄症と分かっても、約3分の1が手術を断念していた。しかし、「TAVI」の登場により、術後生存率を従来の6割から、8~9割に引き上げることが可能となった。65歳以上の患者の術後2年の経過を見ても、「TAVI」の効果は従来の開胸手術とあまり変わらないことが分かった。過去に開胸手術で生体弁を入れている患者でも、「TAVI」によって開胸することなく、新たな人工弁をカテーテルで置換することで、寿命を延ばすことが可能になっている。