2025/07/10

Taiwan Today

文化・社会

新たな学習指導要領、高校の家庭科に財テク教育

2020/03/06
2019学年度から始まった新たな学習指導要領(中国語では「108課綱」と呼ぶ)により、台湾では高校の家庭科の授業に財テク教育が導入された。貯蓄の方法、家計簿の付け方、それにインターネット時代における消費リスクなどを教える。(聯合報)
お金をうまく使うこと、それは人生最大の課題だ。2019学年度から始まった新たな学習指導要領(中国語では「108課綱」と呼ぶ)は「金銭的素養」を重視する方針を打ち出している。このため台湾では現在、高校の家庭科の授業に財テク教育が導入されている。教えるのは貯蓄の方法、家計簿の付け方、それにインターネット時代における消費リスクなどだ。
 
高校の家庭科の授業と言えば、衣食住に関することを教えるものだが、2019学年度からは「ライフマネジメント」の一環として生徒たちに収入や貯蓄の概念を教えている。インターネットを使った消費に関する支払いに関する決まりやリスク回避、それに身近な金融商品などもこれに含まれる。
 
家庭科の教員を育成する国立台湾師範大学人類発展与家庭学系(=学部)の林如萍教授によると、家庭科の授業と言えば衣食住に関する学問という印象が強いが、アメリカで19世紀、家庭科という教育が誕生したばかりのころは、家庭科の授業で時間や金銭など生活資源のマネジメントについても教えていたという。新たな学習指導要領は財テク・金融に関する「素養」を重視したものになっており、金銭管理の重要性が注目されている。これから情報多様化社会に直面する子どもたちが、自分に見合った消費行動の決定ができるようにするという狙いがある。
 
全国家長団体連盟(=全国レベルのPTA団体)で理事長を務める彭淑燕さんは、「最近は1組の夫婦が生む子どもの数が減り、子どもに与えるお小遣いが増えている。子どもたちは比較的恵まれた環境で成長しており、お小遣いがなくなったとしても、またいつでももらえると考えている。こうした子どもたちの金銭感覚は、その前の世代とは違うものだ。しかし、彼らは社会に出たあと、以前よりも低賃金、高物価の環境に直面することになる。このため、財テク教育の重要性が高まっている」と指摘する。
 
台北市立成功高級中学(=高校)の家庭科の教員、鄭忍嬌さんによると、台湾では中等教育の段階にある子どもが家族と家庭の生計について話をする機会はあまりないし、財テクが中等教育の段階で必要なものだとはみなされていない。しかも、父兄たちはお小遣いを与えるものの、子どもたちが財テクの研究にあまり多くの時間を注いでほしくないと考えている。このため鄭忍嬌さんは「学校で教えることは、生徒たちが財テクに関する考え方を整理するきっかけになる」と評価する。
 
中学から財テクを教育に取り入れている学校がある。国立交通大学教育研究所の呉俊育副教授は2年前から、新竹市立香山高校中等部の教員と協力し、中学2年生の数学の授業のうち、1時間を財テクの授業に当てている。1学期間教えても、生徒たちの数学の成績が後退するようなことはなかった。そればかりか、数学嫌いな生徒ですら、数学が実用的な学問であることを自覚し、より数学に興味を持つようになった。成績が中・上位の生徒ほど、数学の授業に焦りを感じており、もっと勉強したいと考えていたが、この授業はこうした焦りを解消するのにも役立っているという。
 
香山高校中等部の生徒の多くは、ビジネスをしている家庭の出身だ。このため、この学校では財テクの教育を授業に導入することを決めた。呉俊育副教授は数学教師4名と一緒に、一つのウェブサイトを立ち上げた。実際の株式市場の数字を使って、生徒たちに自分が持っているお金を入力させ、普通預金や定期預金、それに不動産、金、ファンド、株などの売買をシミュレーションさせるというものだ。
 
ほとんどの中学生が、これまで投資などやったこともなかった。しかし、呉俊育副教授によると、生徒たちはすぐに株の売買について理解した。実際の操作を繰り返しながら、「値上がりしたら売却する。下落すれば持ち続ける」という概念を理解できるようになった。授業中も白熱した議論が交わされる。基本的な貯蓄は実用的だし、数学の授業で習った複利計算の概念が役に立つ。生徒たちは長い時間をかけてこうしたことを理解していくのだ。
 
授業ではFX取引のシミュレーションも行う。ときには時事問題も導入し、経済の動きがいかにして米ドルや台湾元の関係に影響を与えているかについても理解してもらう。こうした時事問題は、中学3年生の社会科の内容とも関係してくる。呉俊育副教授は今後、2年生で財テクの授業を受けた生徒たちが、3年生の社会科の学習にその知識を生かせるかどうかを観察していきたいと考えている。
 

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