2025/05/18

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文化・社会

「台湾に永遠の詩を残した」 詩人・楊牧氏が死去

2020/03/16
台湾の著名な詩人の楊牧氏(写真)が13日、79歳で死去。文化部の鄭麗君部長は、愛と哲学、ロマンと正義を伝える永遠の詩を台湾のために残してくれたとその死を惜しんだ。(台湾文学館提供・撮影者林柏樑、中央社)
台湾の著名な詩人の楊牧氏が13日に死去。79歳だった。文化部(日本の省レベル)の鄭麗君部長(大臣)は楊牧氏について、命をかけて思索を続け、詩を追求してきたと称えた。鄭文化部長は、楊牧氏は一生全てを詩の創作に捧げ、愛と哲学、ロマンと正義を伝える永遠の詩を台湾のために残してくれており、これらの詩は世代を越えて読み続けられるだろうと述べた。文化部は蔡英文総統に、「褒揚令」(国に多大な貢献をした国民を政府が称えることを示す公文書)を申請することにしている。
 
楊牧氏の本名は王靖獻。台湾東部の花蓮県出身で、東海大学(台湾中部・台中市)外国語文学科を卒業。米国のアイオワ大学で英語文学の芸術修士を取得。また、カリフォルニア大学バークレー校では比較文学で博士号を取得、米国のマサチューセッツ大学やプリンストン大学、ワシントン大学で30年間にわたって教鞭をとった。
 
楊牧氏は帰国後、国立東華大学(花蓮県など)が人文社会科学部を新設するのに協力、初代学部長も務めた。また、台湾の最高学術研究機関である中央研究院に招かれ、同研究院の中国文哲研究所(中国文学・哲学研究所)でディスティングィッシュドリサーチフェロー 兼所長を担当した。さらに国立台湾大学(台湾北部・台北市)の比較文化研究所で客員教授、香港科技大学で講座教授(Chair Professor)、国立政治大学(台北市)の台湾文学研究所で講座教授を務めた。
 
また楊牧氏は国家文芸奨(賞)、時報文学奨(賞)、呉三連文芸奨(賞)、米国の「紐曼華語文学奨(Newman Prize for Chinese Literature)」、マレーシアの花蹤華文文学奨(賞)、スウェーデンのチカダ賞、二等景星勲章など幾多の栄誉に輝いた。詩とエッセイは英語、韓国語、ドイツ語、フランス語、日本語、スウェーデン語、オランダ語など様々な言語に翻訳されている。
 
その作品は主に詩とエッセイ。また、論文や翻訳作品もある。15歳から「現代詩」、「藍星」、「創世記」、「今日新詩」など詩を集めた刊行物で活躍、16歳のときには「東台日報」、「海鴎詩刊」で編集長を務めるなど数多くの作品を残した。1960年には「葉珊」というペンネームで詩集『水之湄』を発表し、詩の世界での確固たる地位を築いた。
 
1972年にはペンネームを「楊牧」に改名。代表的な作品の自伝的エッセイ『山風海雨』、『方向歸零』、『昔我往矣』ではふるさとである花蓮県の歴史や記憶について記している。また、『一首詩的完成』は楊牧氏の詩に対する理念と考え、及び詩人の文学に対する魂とも言うべきものを表現した。
 
楊牧氏は詩人、エッセイスト、翻訳家、そして学者と言うマルチな活躍で知られる各界公認の台湾文学の大家だった。このため国立東華大学は2年前に「楊牧文学研究センター」を設けている。
 
また楊牧氏は過去、志文出版社の新潮叢書で共同編集長を務め、「文史哲思想」(文学・史学・哲学)を持ち込むと共にその普及に努めた。さらに台湾文学にとっての重要な出版社である「洪範書店有限公司」を共同で創業、台湾の文学に計り知れない影響をもたらした。
 
 

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