2025/08/04

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文化・社会

写真家の柯錫杰さんが逝去、台湾における「現代写真の第一人者」

2020/06/08
台湾における「現代写真の第一人者」と呼ばれた写真家の柯錫杰さんが5日夜、逝去した。日本占領時代の1929年生まれ、90歳だった。(柯錫杰工作室提供、中央社)

台湾における「現代写真の第一人者」と呼ばれた写真家の柯錫杰さんが5日夜、逝去した。90歳だった。

 

柯錫杰さんは日本占領時代の1929年、台湾南部・台南に生まれた。柯家では8番目の子どもで、幼いころから聡明で腕白だったという。19歳のころ初めてカメラを手に入れ、それから撮影にのめり込んでいった。日本の東京綜合写真専門学校で学び、商業写真や芸術写真の分野に足を踏み入れた。1960年代には米ニューヨークに移住し、多くの雑誌や媒体、商業ブランドの特約カメラマンとなり、広告やファッションカメラマンとして名が知られるようになった。

 

1979年には、創作上のブレークスルーを求めてニューヨークを離れ、インド、南欧、北アフリカなどで風景撮影を手掛けるようになった。柯さんはこの期間、簡素なスタイルと研究された構図で、映像に詩的な意味を持たせるよう取り組んだ。また、特殊な転染法を利用したカラー写真の撮影に挑戦し、独自のスタイルの心象風景(しんしょうふうけい)を生み出してきた。的確な技術と美的感覚で、文学の世界の「詩的な境地」と美学の世界の「絵画としての質感」を伝える写真を撮り続けた。

 

過去に呉三連基金会の撮影部門「芸術奨(=賞)」を獲得したほか、2006年には行政院主催の第10回「国家文芸奨」を受賞している。2006年にはフランスの有名な出版社Cercle d’Artが写真集『KO SI-CHI』を出版。2019年には国父紀念館(台湾北部・台北市)で個展「絶対・詩学-柯錫杰玖齢 影像芸術展」を開催した。個展では柯さんの人生におけるさまざまな段階の作品を、創作のテーマ、スタイル、人間関係などに分けて展示。リアルな生活における「柯錫杰」という人物について、より多くの人に知ってもらうきっかけとになった。


ノーベル賞文学賞を受賞した中国出身でフランス国籍の作家、高行健さんはかつて柯錫杰さんの作品を「一幅の絵画だ」と形容したことがある。台湾の詩人、紀弦さんは、柯錫杰さんの作品を「詩」であると形容した。つまりその作品は詩的な境地と絵画の質感を併せ持つもので、詩のようでもあり絵画のようでもあると各界の文化人から好まれた。

 

柯錫杰さんは台湾の写真界において最も長い経歴持つ、また大きな貢献をした芸術家であり、台湾における「現代写真の第一人者」と称され、海外からも20世紀を代表する写真家の一人に挙げられている。

 

撮影史料の保存に取り組み、2015年以降は国家撮影文化センターの開設を進めている中華民国(台湾)文化部(日本の文科省に類似)は、毎年『台湾撮影家シリーズ叢書』を出版しており、2017年度には柯錫杰さんを取り上げた一冊を出した。2019年10月に柯錫杰さんの個展を主催した国父紀念館も文化部に隷属する。文化部は柯錫杰さん逝去の知らせを受け、蔡英文総統に対して「褒揚令」(国に多大な貢献をした国民を政府が称えることを示す公文書)の発行を申請するとしている。

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