台湾北西部・苗栗県通霄鎮の白沙屯拱天宮は16日、新型コロナウイルスの影響を受けて延期を決めていた今年の媽祖巡礼(8泊9日)を7月5日午前2時15分からスタートすることを発表した。
媽祖(航海の安全を守る道教の女神)を祀る拱天宮は、媽祖を祀るほかの廟宇と同様、毎年旧暦3月になると、媽祖の神像を載せた神輿を大勢の信者が担いで街を練り歩く巡礼活動を実施している。拱天宮と台湾中部・雲林県北港鎮の朝天宮を徒歩で往復するもので、昨年は台湾中部・台中市大甲区の鎮瀾宮が行う媽祖巡礼と時期が重なったが、それでも約5万人が参加した。今年は3月から7月に延期となったものの、現時点ですでに3万8,000人が参加を申し込んでいる。
拱天宮は今月13日に道教のポエ占いで媽祖にお伺いを立て、延期になっていた今年の媽祖巡礼の実施を決めていた。拱天宮はその後、「香案」と呼ばれる香炉をのせる台を設置して3日間、媽祖にお伺いを立てた。16日午後1時、今年の「炉主」がポエ占いを行ったところ、7月5日午前2時15分に拱天宮を出発し(「起駕」)、7月8日に北港に到着し、9日に朝天宮で灯明を受け取り(「進火」)、13日に拱天宮へ戻る(「回宮」)という日程が確定した。全日程は従来と同じ8泊9日となる。
但し、拱天宮は今年、信者たちが地面に額づくように跪き、その上を媽祖の神像を乗せた神輿が通る「躦轎脚」は行わないとしている。また、香燈脚と呼ばれる巡礼の参加者でも神輿の周囲を取り囲まず、一定の距離を維持して分散して行動するよう求めている。さらに、媽祖の神像をのせた神輿が屋内に入るときはむやみについて入らないこと、できる限り自宅などでインターネット中継を見て「参加」することなどを呼びかけている。
衛生福利部(日本の厚労省に類似)は現在、「防疫新生活(新しい生活様式)」の実践を求めている。拱天宮は政府の政策に協力し、廟宇の管理委員会や巡礼活動に関わるスタッフが参加者の氏名と連絡先を登録して管理するほか、毎日の検温やアルコール消毒を実施して感染症対策の規定を守ること、「起駕」や「拝天公」など巡礼活動に関する宗教儀式を簡素化し、参加者が密集する時間をなるべく減らすことなどを決めている。
拱天宮と朝天宮を徒歩で往復する媽祖巡礼は200年近い歴史を持つ。走行距離は約400キロメートルに及ぶもので、拱天宮では毎年旧暦12月15日にポエ占いでお伺いを立て、巡礼の日程や日数を決めている。その最大の特色は固定のルートを持たず、行く先々で媽祖にお伺いを立てながら神輿が進む方向を決めていることだ。この宗教行事は2008年、苗栗県の民俗文化資産(=無形文化遺産)に指定された。2010年には国家無形文化資産重要民俗(=国指定の重要無形民俗文化財)の指定を受け、2013年には「台湾宗教百景」の一つにも選ばれている。