台湾東部、台東県の離島、蘭嶼を居住地域とする先住民族、タオ族(ヤミ族とも呼ばれる)の集落の一つ、紅頭集落では22日、粟の収穫祭「小米豊収祭」が行われた。
蘭嶼に暮らすタオ族の「小米豊収祭」は、毎年開催される祭事「Apiya Vehan」におけるイベント。旧暦5月1日に行われ、トビウオ漁シーズンで最も重要な祭典の一つとされている。「小米豊収祭」が幕を閉じると、トビウオ漁シーズンの終わりを告げることを意味し、タオ族の人々は漁をやめ、その年のトビウオ漁が終了する。
紅頭集落で小米豊収祭が行われたのは10年ぶり。2018年の集落会議で集落民の団結を促すための「小米豊収祭」開催が提案され、開催の運びとなった。
紅頭集落では2020年の開催に備えて、伝統的な暦に従い、まず2019年の秋と冬に同集落内の青々草原を整地し、粟の種まきをした。それから半年の間に、栽培、収穫、貯蔵を経て、2020年の夏に「小米豊収祭」の開催が実現した。
「小米豊収祭」は長老による美しい吟声で幕を開け、女性が髪を上下に振って踊る伝統舞踊「頭髪舞」、「搗小米(粟つき)舞」、「圓圈舞」、「迎賓舞」などが披露され、祭りの終わりまで歌と踊りが絶え間なく続いた。また、紅頭集落やタオ族に関する文化遺産の展示や懐かしい写真展も行い、訪れた人々に懐かしい思い出をよみがえらせた。
伝統的な歌や踊りのほか、若者たちによるモダンダンスの公演もあり、多様な演出が深夜まで繰り広げられ、様々な美しさに触れることができるイベントとなった。
かつての粟の種まきは、単一の漁業団体が代々伝承する家族のみのイベントで、粟の種まきに関する多くのタブーと関係があったため、家族を越えて団体で行ったケースが非常に少なかった。しかし、知識の豊富な長老が年々減っていくにつれ、伝統的な知識、生活哲学や知恵なども文明社会の訪れとともに衰退していった。
伝統的な文化が消失していくという危機感が高まり、紅頭集落では1970年から5回に渡って、複数の漁業組織が連携して「小米豊収祭」を行った。集落に住む経験豊富な長老が先頭に立ち、整地、種まき、収穫、貯蔵を行ったほか、「搗小米舞」や豊作を祝う歌などを披露した。お年寄りから若者まで様々な世代が肩を並べて互いに学びながら、文化的景観や祖先が築き上げた創造的な知識を探っている。その目的は、伝統文化に関する儀式の精神を実践し、風俗習慣を継承するという重要な理念を実現することにある。