内政部は6月29日、中華民国(台湾)への帰化申請審査を通過した高度外国人材8人のリストを発表した。そのうちの一人、マレーシア出身の歯科医師、黄菁菁さんは歯髄保存研究のスペシャリストだ。
黄菁菁さんはマレーシアの客家人家庭に生まれた。台湾にやってきて20年近くになる。最初の2年間は国立台湾大学で学び、修士号を取得した。専門領域は予防歯科、歯科保存、歯髄保存の研究などだ。台湾で現在103人しかいない歯科保存治療専門医の一人でもある。
歯髄保存治療とは、重度の虫歯や、外傷によって歯髄が露出した歯に対して、最先端のバイオセラミックスなどを用いた治療を行い、歯の神経組織の健康を取り戻し、象牙質と歯髄の再生を誘発するというもの。抜髄や抜歯を避けることで、歯の活性を残すことができる。
黄菁菁さんは大学院在学中から歯髄保存治療のための新たなマテリアルや技術の研究・開発に取り組んできた。2016年には国際ジャーナル『Dental Materials』で関連の論文を発表した。その研究成果は、海外の専門的な賞を受賞するなど続々評価されている。2014年の第92回国際歯科学研究会議(IADR)では、歯髄生物学と再生部門の最優秀賞を獲得している。
台北市立動物園(台湾北部・台北市文山区)は2018年、同動物園で飼育しているオスのジャイアントパンダ「団団」の歯に人工歯冠(クラウン)をかぶせる治療を行った。獣医師や歯科医師から成るチームが「団団」のために行ったのが歯髄保存治療と、チタン製の人口歯冠をかぶせるというものだった。黄菁菁さんによると、この治療チームが当時使った技術とマテリアルこそ自分の長年の研究の成果だった。黄菁菁さんはまた、自分の研究成果が海外で評価されることが、台湾の口腔医学の国際イメージ向上に役立っていることは嬉しいと話している。
中華民国国籍の取得が認められたことについて黄菁菁さんは、「選挙権を行使してみたい」と期待に胸を膨らませている。なぜなら、投票という行為によって、台湾とより直接的に結びつくことができるからだ。このほか、帰化後は銀行などで、台湾の人々と同じ行政上の便宜を受けることができることもありがたいと話す。何よりも、マレーシア国籍を放棄する必要がないため(高度外国人材の帰化は二重国籍が認められる)、高齢の両親に会うためにマレーシアに帰る際、身分の変更による不便が生じないのが良いと歓迎している。