教育部(日本の文部科学省に類似)、文化部(日本の文科省に類似)、行政院原住民族(先住民)委員会(日本の省レベル、原民会)は共同で、28日から始まった先住民族をテーマにした展示会「拿麼厲害!!(直訳すると『どれだけすごいのか!?』という感嘆の言葉。あっぱれの意味)」の開幕記者会見を開催した。
台湾北部・台北市の振興医療財団法人振興医院の救急医療センターの主任を務める田知學医師は、台湾の先住民族・ブヌン(布農)族出身で、同展示会のポスターのモデルにも起用されている。田知學医師は、漢人学校(中国語を国語とする学校)に入った時、肌の色が浅黒かったことから『黒豚』というあだ名をつけられた経験があり、生まれ育った集落の中の「平等」という概念が、一般社会では通用しないことに驚きを感じだという。それから徐々に、先住民族と呼ばれる人たちは、そうでない人よりさらに努力をしなければ、高い地位について社会から認められず、そうでなければ、単に努力をしない社会に寄生した下層階級の人として見られてしまうとの苦悩を語った。
そのような中でも田知學医師は、祖父が言っていた「集落を出て生活していても、自身がブヌン族であることを忘れてはならない」という忠告を胸に刻んでいた。そうして、多くの経験を経て辛い涙をたくさん流した後、本当に必要なことは、本当の自分を受け入れ、認め、肯定することだということに気が付き、そうすることで、本当の自分を見つけ、前に進むための一歩を踏み出すことができたという。
そして、田知學医師は「私は、台湾中部・南投県信義郷出身のブヌン族です。名前は、Valis Tanapima(ブヌン族名)です」と出自に誇りを持って発言できるようになった。
一方、総統府の報道官、Kolas Yotaka(グラス・ユタカ)氏は台湾先住民族のアミ族の出身。若い頃、ファストフード店に行くと、肌の色から外国人労働者から声をかけられたりして、クラスメートからは「マリア(台湾で家政婦として働くフィリピン人女性に多い名前)」とからかわれたりしたこともある。先住民族にはみな、誤って認識されたことによる辛い経験を持つと話すKolas Yotaka氏によると、政府が先住民族を指す正式名を「山地同胞(山に住む仲間)」から「原住民族」としたのは、先住民族が古来より台湾に定住している人々との意味が込められていることの表れだ。
Kolas Yotaka氏はさらに、「すぐには痛みも治まらず、涙も止まらない。そのような逆境の中でも、先住民族は立ち上がって、不平等という妨害を一歩ずつ乗り越え、希望と未来を次世代に託そう」と呼びかけた。
教育部の潘文忠部長(大臣)は、社会では未だに先住民族に対する無知や理解の足りなさから、多くの先住民族たちの素晴らしい特性や貢献を目にすることができないでいると説明した。教育部は「原住民族教育法」を改正するよう推進し、先住民族が自身の出自を理解できるようにするだけでなく、この土地に住むすべての人々も是非この特色あるエスニックグループを理解してほしいとしている。
「拿麼厲害!!」は、10月18日まで国立自然科学博物館(台湾中部・台中市)で開催されているほか、8月21日から10月18日までは原住民族委員会原住民族文化発展中心(台湾南部・屏東県)、7月30日から9月20日までは国立台湾史前文化博物館卑南文化公園展示ホール(台湾南東部・台東市)にて開催されている。詳細は、フェイスブックページ「拿麼厲害特展」を参照のこと。