原因不明の疼痛は、もしかしたら心理的なストレスが影響しているのかもしれない。台湾の最高研究機関である中央研究院の研究チームはこのほど、科技部(日本の文科省に類似)の助成事業の支援を受け、ラットに心理的なストレス性の刺激を与えた結果、長期的な非炎症性疼痛が生じることを証明した。この症状は臨床上、「線維筋痛症(せんいきんつうしょう)」と呼ばれるものと同じで、「血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ」によって痛みを軽減することができる。この研究論文は今年9月、海外の医学雑誌『Annals of the Rheumatic Diseases』に掲載された。また、海外での特許申請を行っている。
線維筋痛症を発症する人は成人全体の2~6%と言われている。神経科や疼痛科の外来でよく見られる疼痛疾患の一つで、全身の広範囲にわたって慢性的に筋肉の痛みが出る。また、疲労、不眠、焦り、うつなどを併発することもある。過去の臨床研究では日常生活の精神的ストレスが線維筋痛症を誘発あるいは重症化させると言われていた。しかし、その因果関係は臨床研究で認定することは困難で、医学上、線維筋痛症の病因には不明な点が多かった。
中央研究院生物医学科学研究所の陳志成研究員と、私立高雄医学大学附設中和紀念医院の洪志憲主治医師が結成した超域研究チームは、科技部が実施する2つの助成プログラムによる支援を受け、動物のストレス脆弱性モデルを確立し、線維筋痛症を引き起こす原因とメカニズムを探した。
また、同チームは線維筋痛症の治療方法として、動脈硬化の治療薬である「血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ」が動物実験ではストレスに起因する疼痛反応を緩和する効果があったことを証明した。この発見は現在、海外での特許申請中で、将来的には血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼの臨床治療に使うことができると考えている。