2025/07/05

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文化・社会

国立陽明大学が早老症の発症メカニズムを発見、欧州の学術誌に掲載

2020/10/13
国立陽明大学生化・分子生物研究所の陳鴻震教授(写真右から3人目)が率いる研究チームは、Primary cilia(一次繊毛)の異常がハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)の発生機序となる可能性を発見し、HGPSの治療に新たなアプローチを提供した。この研究成果はヨーロッパの学術雑誌『EMBO Reports』に掲載されたほか、カバーストーリーにも採用された。写真左から3人目は科技部の謝達斌政務次長(=副大臣)。ほかは国立陽明大学の研究チームのメンバーたち。(科技部サイトより)
早老症疾患の一つであるハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)は、患者の平均寿命わずか13歳と言われる疾患だ。先天的遺伝子異常が原因であることは分かっているが、その発生機序(発症メカニズム)については明確にされていなかった。国立陽明大学生化・分子生物研究所の陳鴻震教授(非常勤)が率いる研究チームと、財団法人国家衛生研究院生技與薬物研究所の紀雅恵副研究員が科技部(日本の文科省に類似)の長期的支援を受けて研究に取り組んだ結果、Primary cilia(一次繊毛)の異常が重要な発生機序となる可能性を発見し、HGPSの治療に新たなアプローチを提供した。この研究成果はこのほど、ヨーロッパの分子生物学分野の学術雑誌『EMBO Reports』に掲載されたほか、カバーストーリーにも採用された。
 
HGPSは1886年に発見されたが、2003年になってそれがLMNA遺伝子(ラミンAをコードする遺伝子)の異常によるものであることが解明された。HGPSの患者は、嬰児のころから発育不良、皮下脂肪の減少、シワの増加、頭部の脱毛、骨粗しょう症、心血管疾患、関節のトラブルなどに見舞われる。
 
研究チームはまず、HGPSの患者の皮膚の線維芽細胞(せんいがさいぼう)の中に、ごく少数のやや短いPrimary cilia(一次繊毛)があることを発見した。陳鴻震教授によると、Primary cilia(一次繊毛)の機能は細胞のアンテナのようなもので、細胞外の環境の変化を読み取り、その情報を伝えて細胞がそれに調整できるようにする。このため研究チームは、Primary cilia(一次繊毛)の異常がHGPSの発生機序である可能性があると推測した。
 
研究チームによると、LMNA遺伝子の欠陥は、アクチン細胞骨格 (actin cytoskeleton) の過度な再構成につながり、ひいてはPrimary cilia(一次繊毛)の形成を阻害する。反対に、アクチン細胞骨格の再構成を抑制すれば、Primary cilia(一次繊毛)の形成を回復することができる。この発見はHGPSやその他のラミノパシー(核ラミナのタンパク質をコードする遺伝子の変異によって引き起こされる希少遺伝疾患)の発生機序の解明につながるだけでなく、関連疾患の治療方法の開発についても斬新な研究アプローチを提示するものである。
 

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