膵臓(すいぞう)の悪性腫瘍(がん)は、初期には無症状であることが多いため、気づいたときにはかなり進行している。5年後の死亡率は9割を超えることから、「がんの王」と呼ばれる。国立台湾大学医学院の研究チームは世界で初めてAI(人工知能)を使い、膵臓に出来たわずか1㎝サイズの腫瘍も発見できる技術を開発した。精度は9割以上に達することから、膵臓がんの早期発見・早期治療につながると期待されている。
この研究の成果は、衛生福利部中央健康保険署が27日に行った「健康保険制度25周年 健康保険データのAI応用に関するシンポジウム」で発表された。
研究に参加した国立台湾大学胃腸肝胆科の廖偉智医師によると、台湾では2019年、がんで亡くなった人の内訳のうち膵臓がんが7位だった。昨年だけで2400人以上の尊い命が膵臓がんによって失われた。しかし、膵臓がんは初期には無症状であるため、がんであると診断されたときにはがん細胞が拡散し、非常に深刻な状況で、積極的な治療が出来ないことが多い。米国での研究によると、腫瘍が2㎝以下の場合、CT検査でも4割が見えないか、見落とされるという。
廖偉智医師によると、膵臓がんはCT画像でも通常は小さなひと塊の「浸潤」でしかないため、経験を重ねた専門医であっても肉眼で見つけることは難しい。しかも、医師たちは誰もが一日中、大量の診断を行わなければならず、AI(人工知能)によるサポートは必要不可欠となっている。
国立台湾大学医学院の研究チームは2年前から、健康な人や病気の人の画像データ3,000件をAIにディープラーニングさせてきた。また、米国の画像データ検証によって、AIシステムが9割以上の腫瘍を診断できるようにした。
この研究の成果は今年7月、海外の医学雑誌『The Lancet Digital Health』に掲載されたほか、米国の消化器系の学会から今年度の優秀論文に選出された。