国立台湾歴史博物館(台湾南部・台南市安南区)の常設展館(=常設展示ホール)は2019年11月から休館し、開館以来最大規模となる館内改装とソフトウエアのアップデートを含むリニューアル工事を行っていた。その国立台湾歴史博物館が1年余りの工事を終え、今月8日にリニューアルオープンする。これまで500~600点だった館内の展示物も、1,068点に大幅増加。参観者はインタラクティブなマルチメディア・ツールを使い、五感を通して台湾の歴史のさまざまな様相を「体験」することができる。
2011年に開館した国立台湾歴史博物館は、台湾通史をテーマにさまざまな時代における土地と住民の歴史を伝えてきた。今回の常設展館のリニューアルでは、台湾を人々や歴史が「交わる島」ととらえ、漢民族と平埔族(=平地に住む先住民族を指す)、西洋人、日本の政権、国民政府、そして現代が、台湾という場所で「交わる」ことを強調した内容となっている。また、入口には今回はじめて 台湾先住民族の芸術家が手掛けた現代アートを設置。芸術という形式により、台湾先住民族に伝わる伝説を表現している。展示内容もエスニシティの主体を描き出すことが強調されており、地域密着と「常民(じょうみん)」の視点を重視し、さまざまなエスニシティの口述歴史や伝統歌謡なども取り込んだ。展示品のレイアウトについては先住民族集落の長老にも協力を仰いだ。
国立台湾歴史博物館は開館以来、ジェンダー平等、「新住民(台湾人との婚姻により台湾に移り住んだ外国人配偶者やその子弟を指す)」、さまざまな社会運動に関係する収蔵品を集め、各地の人物を対象にしたフィールドワークを行ってきた。今回のリニューアルでは、こうした資料も展示されることになる。
インタラクティブなマルチメディア・ツールと映像コンテンツについても、今回のリニューアルによって69項目と大幅に増えた。例えば3057枚の古今の写真を組み合わせて作った台湾の人物群像の映像、台湾文化協会が歴史をテーマに作ったインタラクティブなゲームのほか、音声やさわって体験ができるツール、口頭伝承を可視化したものやVR作品などがある。