台湾中南部・嘉義県に位置する阿里山国家森林遊楽区（阿里山国家森林レクリエーションエリア）のサクラが近年衰えを見せている。「詹鳳春日本樹医団隊」（詹鳳春日本樹木医グループ）による調査で、その主な原因は天狗巣病であり、土壌硬化や水はけの悪さも影響していることが分かった。このため成長に適した環境整備が行われており、これらのサクラがこれからも元気に育っていけるよう期待されている。
行政院農業委員会林務局（日本の林野庁に相当）嘉義林区管理処の李定忠副処長によれば、阿里山は台湾で最も早くからサクラが大量に植えられた地区。1903年には日本人によってソメイヨシノが試験的に植え付けられたという。当初の数は限定的で本格的な植林は1918年から。その後ヤエザクラなどが導入されたほか、さらに台湾のカンヒザクラも加わり、阿里山は国内外に知られるサクラの名所となった。
阿里山国家森林遊楽区に植えられているサクラは約2,800株で品種は30を超える。毎年3月から4月の「お花見」イベントは大勢の行楽客を引き付ける。しかし近年、これらサクラの樹勢が衰えていることが見つかり、政府は2019年に「詹鳳春日本樹医団隊」に調査を依頼、これら桜のデータとそれぞれの診断書をまとめてもらい、開花状況の改善を目指すこととなった。詹鳳春さんは台湾で唯一、日本の「樹木医」の資格を持つ女性として知られる。
「詹鳳春日本樹医団隊」によると、サクラの樹木根系は主に水平根か斜出根。養水分の吸収は地表から下10～30センチメートルの層に集中しているが、阿里山では花見客が繰り返し地面を踏み固めたことで土壌の硬化が起こっており、樹木根系にとって大きなストレスとなっている。
このため同団隊は土壌のpH値（酸性・アルカリ性の程度を表す）及び水はけを調整してサクラの成長に適した環境を整えた。また、天狗巣病枝の除去や幹の腐朽に対する処理などで病害の広がりを抑え、樹木がしっかりと休みながら細根を成長させ、葉を増やし、自ら養分を生み出せるようにした。こうした努力が最終的には開花の質と量を高めることになるのだという。
なお、同団隊が行ったサクラの一斉調査の結果、一部の老木はやはり立地環境の問題で樹勢が日ごとに衰えており、新たな苗「二代木」の導入による世代交代が不可欠であることも分かったということ。