英ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(Victoria and Albert Museum, V&A)は、世界中から集められた美術工芸品を数多く所蔵することで世界的にその名が知られる。近年、張清淵さんの「莫名石(Rock with no name)」シリーズや陳智権さんのチタンアートジュエリーなど、台湾の現代アート作品の数々を購入・収蔵しており、同館の台湾の現代アートやデザイン作品に対する関心の高さがうかがえる。
陶芸家であり、国立台南芸術大学(台湾南部・台南市)の教授でもある張清淵さんは、第50回記念日本現代工芸展の現代工芸特別賞や米メリーランド州視覚美術個人アーティスト奨学金などを獲得した経歴を持つ。その作品は、例えば日本の滋賀県立陶芸の森、石川県金沢市の大樋美術館など、海外の多くの博物館に収蔵されたり、展示の引き合いを受けたりしている。今年に入ってからヴィクトリア・アンド・アルバート博物館によって収蔵されることになった「莫名石」シリーズは、陶造形を奇石に見立てた作品を容器の外に置いたり、透明の箱の中に入れて被観察対象の実験物としたり、あるいは天秤にかけて重さを比べるなど、さまざまな「錯誤」を通して、台湾文化の主体性に関するさまざまな思考を暗喩する作品だ。
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館によって昨年収蔵されたもう一つの台湾の作品は、陳智権さんのチタンアートジュエリーだ。同館の収蔵品としては、台湾人ジュエリーアーティストの作品第1号となった。収蔵された作品はモクレンの花をテーマにした創作で、チタンを使って立体の塑像を作り、その一部をさらに別のジュエリー・アクセサリーにしたもの。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館はその公式サイトで「彫刻、インスタレーション、ジュエリーを組み合わせ、21世紀のジュエリーデザインに斬新な定義を与えるもの」と評価している。
現在館内ではまだ、これら2人の作品を展示していないが、公式サイトで作品のデータを閲覧できるようになっている。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館はこのほかにも、梁家豪さんの陶造形や白滄沂さんの木彫作品など、台湾人芸術家の作品を収蔵している。