2025/05/28

Taiwan Today

文化・社会

台湾の漫画家・呉識鴻さん、詩人・楊牧さんの作品を漫画化してベルギーで受賞

2021/09/13
台湾の漫画家・呉識鴻さん(右)の作品『山風海雨』が、ベルギーの「レイモンド・ルブラン賞」を受賞した。台湾の詩人・楊牧さんの同名の散文作品を呉識鴻さんが漫画化したもの。台湾人の受賞はこれが初めて。(目宿媒体提供、文化部)
ベルギーのブリュッセルで開催されている「コミック・ストリップ・フェスティバル」は10日、新進気鋭の漫画家を対象とする「レイモンド・ルブラン賞(英語:The Raymond Leblanc Prize、仏語:Prix Raymond Leblanc)」を台湾の漫画家・呉識鴻さんの作品『山風海雨』に授与すると発表した。この作品は、台湾の詩人・楊牧さんの同名の散文作品を呉識鴻さんが漫画化したもの。台湾人の受賞はこれが初めてで、欧州国籍以外が受賞するのもこれが初めてとなる。
 
文化部(日本の文科省に類似)の李永得部長(=大臣)は知らせを受けて、呉識鴻さんが漫画を通して台湾の存在感を高め、台湾の漫画と文学の異なる可能性を切り開いてくれたことを喜び、感謝した。また、台湾の創作者がさまざまな題材を取り上げた漫画を通して、台湾漫画の新たな可能性を模索するよう期待を寄せた。
 
「レイモンド・ルブラン賞」は、ベルギーが誇る国民的漫画『タンタンの冒険』を出版したレイモンド・ルブラン氏に由来し、新進気鋭の漫画家に贈られる賞としては欧州で最も賞金が高額なことでも知られる。年齢・国籍は不問で、受賞者は1名のみ。賞金1万ユーロに加え、フランス語版出版に伴う印税1万ユーロが先払いされる。
 
呉識鴻さんは過去に、台湾の文学者を紹介するドキュメンタリー番組『他們在島嶼写作』や、作家・王文興さんを取り上げたドキュメンタリー番組『尋找背海的人』の中で、さまざまな媒材を使用した短編アニメーションを制作し、王文興さんの作品『星雨楼随筆』、『背海的人』、『草原底盛夏』などの小説のイメージを描き出した。これらのアニメーションが、インタビューの合間に流れ、見る人に深い印象を与えた。
 
昨年は詩人・楊牧さんの散文『山風海雨』を漫画で解釈するという新たな試みに挑戦。挿絵やアニメーション分野における豊富な経験を武器に、呉識鴻さんは文学の世界を見事に解釈し、台湾漫画界に全く新たなスタイルと気風をもたらした。
 
楊牧さんは日本統治時代の1940年、花蓮(台湾東部)に生まれた。太平洋戦争と、日本統治からの脱却の時代を経て、戦後台湾における詩人の第一人者となり、散文家、評論家、翻訳家、学者としても活躍した。散文『山風海雨』は1984年から1986年にかけて執筆した。
 

ランキング

新着