2025/06/17

Taiwan Today

文化・社会

黄土水の作品が日本の佐渡から高雄市に移設、台日の文化交流に新たな1ページ

2022/07/29
台湾から日本に美術留学して「帝展」に入選した最初の芸術家、黄土水の『山本悌二郎銅像』が日本の佐渡市から高雄市に移設される。両市は27日、友好交流覚書を交わした。写真は覚書。(台北駐日経済文化代表処より)
台湾から日本に留学して美術を学び、「帝展」(現在の日展)入選を果たした最初の芸術家、黄土水の作品『山本悌二郎銅像』が、台北駐日経済文化代表処の2年あまりの調整と奔走の結果、このほど台湾南部・高雄市に移設されることとなった。高雄市が収蔵する。27日には高雄市と日本の佐渡市が友好交流覚書を締結、謝長廷駐日代表が佐渡市で行われた調印式に立ち会った。
 
謝長廷駐日代表は、駐日代表処と台湾文化センター、そして佐渡市在住の台湾の舞踏家、若林素子女史による積極的な働きかけで佐渡市は『山本悌二郎銅像』の高雄市移設に同意したと指摘、銅像は台日友好を象徴する「貴重なプレゼント」だと喜んだ。そして今回の銅像移設は台湾と日本の政府及び民間の善意と情熱のおかげだとして佐渡市の渡辺竜五市長と市民に感謝した。
 
渡辺市長は、佐渡出身の山本悌二郎が台湾の近代化に貢献したことを誇りに思うとした上で、今回は市民の意見を公募し、最終的に民意に応じる形で佐渡の重要文化資産を台湾に戻すことにしたのであり、そこには台湾と日本の友好的な関係の将来にわたっての発展と交流の深まりに対する期待も込められていると説明、銅像の移設により、台湾と日本の双方がこの貴重な歴史の記憶を代々守っていってほしいと希望した。
 
文化部(日本の省レベル)は近年、海外に残る重要な芸術資産を台湾に戻す取り組みを成功させるなど、台湾の芸術史を整理しなおす文化プロジェクトを推進している。2020年には黄土水の『山本悌二郎胸像』が台湾に戻され、国立台湾美術館(台湾中部・台中市)によって修復と複製が行われた。今回の『山本悌二郎銅像』はこれに続くもので、台湾の文化的な記憶を示すパズルの重要なピースをまた一つ探し当てたことになる。
 
台湾文化センターによると、『山本悌二郎銅像』は高雄市立美術館によって修復されてから同美術館に保存される。また、レプリカを制作して1点を佐渡市の真野公園に、1点を高雄市の橋頭糖廠で銅像が元々あった場所に設置、そして1点を国立台湾美術館での収蔵とする。
 
黄土水は近代の台湾における重要な彫刻家で、台湾から日本に渡って東京美術学校(現在の東京藝術大学)で学んだ初めての留学生。在学中に『山童吹笛』で台湾人として初めて帝展入選を果たし、その後3回連続で入選。作品には精緻で専門的な彫塑技術と故郷に対する濃厚な感情が反映されている。当時の台湾と日本の芸術界における新星で、日本の皇室や政財界の上流階級から銅像の制作を多く依頼された。『山本悌二郎銅像』はそうした中の一つ。山本悌二郎は佐渡出身の政治家で、農林大臣を務めたほか台湾製糖株式会社(台湾糖業股份有限公司の前身)の設立に関わり社長も務めるなど、台湾との縁が深い。
 
 

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