文化部(日本の省レベル)に属する国立台湾美術館(台湾中部・台中市)では長年収蔵と研究を基礎に、台湾の重要な芸術家の個人展覧会や台湾の美術史に関する展示を行っている。今年は台湾の著名な芸術家である李梅樹(1902~1983)の生誕120年にあたることから同美術館は李梅樹記念館、財団法人李梅樹文教基金会と共同で「絵筆の下の真実-李梅樹生誕120年芸術記念展」を開催し、李梅樹という先人が台湾の美術史に残した、地方の風土や人々の美しい物語を写実的に表現する芸術の功績を紹介する。
17日の開幕を控えた15日には文化部の李連権常務次長(=事務次官)が記者会見を開き、国立台湾美術館の廖仁義館長、李梅樹記念館の李景光館長、李梅樹文教基金会の李景文執行長、キュレーターの薛燕玲氏、日本の佐賀県立美術館の秋山沙也子学芸員らが出席した。
李政務次長は、李梅樹は生涯を国、土地、人民に捧げたほか、「立徳、立言、立功」を果たしたと称賛。「立徳」(道徳的な模範となること)の面では李梅樹が「二二八事件」の中で三峡(台湾北部・新北市三峡区)を騒乱から守ろうと尽力したこと、ならびに貧民に医療を施す法案や土地改革に取り組んだことを挙げた。また、「立言」(後世に残る発言や学説を打ち立てること)の面では、「李梅樹は絵筆で台湾と三峡の美しい風景と人々を後世に残したのだ」と称えた。さらに李政務次長は、李梅樹が生涯、公職に加わって農会(農協)の改革を進めたこと、芸術面で自らの技術を惜しみなく伝えたことは「立功」(功績を挙げること)だと説明した。
国立台湾美術館では李梅樹の創作の経歴全てを振り返るため、日本の佐賀県立美術館から李梅樹の恩師である岡田三郎助の代表作を借り受けて展示する。このため記者会見には佐賀県立美術館を代表して秋山学芸員が出席し、李梅樹と岡田三郎助には多くの共通点があると指摘した。李梅樹は日本に渡って「東京美術学校」で学んでいたときに岡田の影響を受けており、二人はいずれも「外光派」(戸外制作)の光の表現方式を用いているほか、作品でしばしば女性を主体とする傾向があった。
また、李梅樹は岡田と同様に教師としても活躍し、エリートたちを育て上げた。李梅樹の作品は生命力にあふれているのが特徴だが、それはまた彼自身の独特の生命の価値に対する表現でもあった。台湾の美術界において李梅樹は「芸術の巨匠」と位置付けられている。
国立台湾美術館の公式ウェブサイト
「畫筆下的真実—李梅樹120歳藝術紀念展」
会場:国立台湾美術館101展覧室(台中市西区五権西路一段2号)
時間:12月17日~2023年3月12日
火曜日から金曜日 午前9時から午後5時まで
土曜日と日曜日 午前9時から午後6時まで
毎週月曜日は休館