約3年の歳月と総工費8.7億台湾元(約41億日本円)を投じた屏東県王船文化館が27日、頼清徳総統、文化部の李遠部長、屏東県の周春米県長(=県知事)らが見守る中、正式に供用を開始した。台湾で初めてとなる「迎王平安祭典」(迎王祭とも)をテーマにした文化施設が誕生した。
「王爺」信仰に基づく宗教行事「迎王平安祭典」は、屏東県の大東港エリアと呼ばれる東港、小琉球(離島)、南洲で3年に1度行われ、「国家重要無形文化資産」(国の重要無形文化財)にも指定されている。この行事のために職人が「王船」を作り、最後は供物を備えた「王船」を焼き払って厄除けを願う。
この王船文化館は潘孟安氏(現在は総統府秘書長)が県長を務めていたころに着工したもので、総工費のうち5億元(約24億円)余りを文化部が負担した。オープニングセレモニーに出席した周春米県長は、「長い歴史を持つ王爺文化が保存され、地元の人々に神のご加護があるよう願う」と述べ、文化部などの協力に感謝した。
文化部の李遠部長は、「屏東の文化は台湾の文化でもある。文化というものは、伝統的であればあるほど現代的であり、ローカルであればあるほどグローバルになる。伝統文化があるからこそ、海外に出ても他者と差別化を図ることができるのだ」と語った。
頼清徳総統は、「迎王平安祭典」で使用される王船は、台湾のさまざまな芸術や文化を融合させたものだと指摘した上で、王船文化館の完成後は3年も待つことなく、いつでも好きなときに王船を見ることができるようになると述べた。また、この文化館では、単純な静態展示だけでなく、新しい技術を駆使した展示方法を採用しており、館内に足を踏み入れるだけで、まるで3年に1度開催される「迎王平安祭典」の盛況を目の当たりにしているような気分になれると説明した。頼総統はまた、「台湾にとって文化はなくてはならないもの。文化は我々のルーツであり、民族のスピリットだ。また、世界各国が台湾がどのような国なのかを認識する根拠になるものだ。この文化館は台湾の民間信仰の中でも重要な王爺や王船文化に関する文物を収蔵し、これを代々伝えていくもので、台湾の人々は自分の文化に誇りを持つことだろう」と述べた。
オープニングセレモニー終了後、頼総統は来賓らとともに入館し、館内を参観した。また、東隆宮の潘慶士董事長や「王船」職人などの説明に耳を傾けたあと、館内に展示されている王船に目を描き入れる「点睛」の儀式を行い、屏東県の「迎王平安祭典」文化の末永い保存と伝承を誓った。