シンポジウムでは基調講演と12本の論文が発表され、「その土地の物語をいかに保存・継承するか」を中心として、2 日間に渡って2 つの主要テーマについて深く議論した。まず14日は「日本での多分野および統合的地域研究の発展」に焦点を当て、日本の地域文化の創造・発展における文化資源の再編、負の歴史遺産について討論した。また、日本の国立歴史民俗博物館(千葉県)の川村清志准教授による「日本における地域文化の創造・発展と文化資源の再編 ―保存から活用までの展開―」に関する対話・交流が行われた。15日は「台湾におけるデジタルアーカイブの可能性」をメインテーマとして、博物館のキュレーターの業務と市民参加のメカニズム、歴史知識の応用と課題、台湾の先住民族のデータ調査とコミュニティのつながりなど、重要なトピックについて議論が繰り広げられた。
今回のシンポジウムには、日本の著名な学者や台史博の研究員が招きに応じて出席した。日本からは、みんぱくの平井京之介教授、高科真紀助教が地域のアーカイブがどのように形成され、記録され、活用されてきたかについて発表し、経験を共有した。そのほか、東京大学と総合地球環境学研究所(京都府)で准教授を務める吉田丈人氏、長野市立博物館の陶山徹学芸員、国文学研究資料館(東京都立川市)の西村慎太郎教授が、日本各地の災害の歴史や記憶、受け継がれてきた知恵など貴重な体験を共有した。台湾からは台史博の陳怡宏研究員、石文誠副研究員、葉前錦副研究員、陳怡菁研究助手、呂怡屏研究助手およびプロジェクトアシスタントの張育君氏と張育嘉氏が、博物館の作業方法や地域の知識の保存と応用について共有した。
台史博の張隆志館長は、「台史博は開館以来、『みんなの博物館』となることを使命としてきた。庶民の生活の記憶を収集、研究、展示、普及することを主な目標としており、これはシンポジウムのテーマとも密接に関係していることから、今回の台日交流を非常に嬉しく思っている。日本と台湾の博物館専門家や学者十数名を招き、博物館職員と交流できる稀有なシンポジウムだ。日常生活における地域文化の記憶をどのように記録、保存、活用するかについて話し合い、文化保存の分野で台湾と日本の交流と協力を促進したい。この国境を越えた協力は、文化保存業務において非常に重要な使命を果たしている」と語った。