2025/05/12

Taiwan Today

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烏山頭ダムの八田與一技師逝去83周年墓前祭、今年も頼清徳総統が出席

2025/05/09
農業部農田水利署は8日午後、台湾南部・台南市にある烏山頭ダム八田與一銅像前で「八田與一技師逝去83周年墓前祭」を開催した。台南市長時代から同墓前祭に欠かさず出席している頼清徳総統は、今年初めて総統の身分で同墓前祭に出席した。(総統府)
(写真:総統府)
農業部農田水利署は8日午後、台湾南部・台南市にある烏山頭ダム八田與一銅像前で「八田與一技師逝去83周年墓前祭」を開催した。台南市長時代から同墓前祭に欠かさず出席している頼清徳総統は、今年初めて総統の身分で同墓前祭に出席し、八田技師の粘り強く果敢な精神は台湾全土に大きな影響を与えており、その精神は現在に至るまで、台湾のさまざまな分野に大きく貢献していると称えた。
 
八田技師は日本統治時代の台湾で活躍した石川県金沢市出身の日本人技師で、烏山頭ダム(台南市)とそれを含む農水施設である嘉南大圳を建設(1920年着工、1930年竣工)し、台湾経済の発展に大きく貢献した。農業部農田水利署は八田技師の命日である5月8日に毎年墓前祭を開催しており、今年は頼清徳総統のほか、農業部の陳駿季部長、農業部農田水利署の蔡昇甫署長、台南市の黄偉哲市長、日本台湾交流協会台北事務所の片山和之代表(駐台日本大使に相当)、同高雄事務所の奥正史所長、それに八田技師の孫の八田修一氏とその家族、金沢市の村山卓市長、「八田技師夫妻を慕い台湾と友好の会」、「八田與一文化芸術基金会」のメンバーなど、台湾や日本から500名余りの人々が出席した。
 
頼総統は墓前祭で、八田技師が烏山頭ダムを建設したことにより、台南は台湾の「米どころ」となった上、さらには工業や商業の発展も促進されたと指摘。現在も烏山頭ダムの水は農業用水や生活用水として利用されているほか、南部科学園区(南部サイエンスパーク)に入居するTSMC(台湾積体電路製造)の最先端プロセス(3ナノメートル)での半導体製造にも使用されており、八田技師の貢献は農業・工業・商業の各分野に及び、台湾全体に非常に前向きな影響を与えていると強調した。
 
頼総統はまた、「台湾における八田技師への感謝の念は時間の経過に伴って薄れることはなく、墓前祭に参列する人の数は年々増えている。八田技師の貢献は台南の上水道計画、高雄の高雄港建設、南投の日月潭水力発電、桃園の桃園大圳、台北の地下水計画にも及んだ。八田技師は日本で生まれ育った日本人技師であるが、東京帝大卒業後はその一生を台湾に捧げた。台南人にとって彼は『台南人』であり、台湾人にとっては『台湾人』である」、「烏山頭ダムは農地を灌漑し、サイエンスパークに水を供給しているだけではない。それは台湾人と日本人の心も潤している。台日間の感情は友人というより、むしろ家族のようだ」などと述べた。
 
頼総統は続けて、日本の元首相や現職の首相らが「台湾海峡の平和と安定は世界の安全と繁栄にとって必要不可欠である」と国際会合の場で繰り返し明言していることに触れ、日本の政府、国会、社会、国民が長年台湾と心をひとつにし、互いに思いやりを寄せてきたことに台湾の人々を代表して感謝するとした上で、これからも双方の発展及びインド太平洋地域の安定のために、日本と共に努力していきたいと期待を寄せた。
 
また、台南市の黄偉哲市長は、烏山頭ダムおよび嘉南大圳の建設がいかに困難な事業であったかに言及した上で、その偉業を支えた技術者たちへの感謝の気持ちを表すため、台南市が六甲区公所(区役所)、農会(農協)、地元の若手生産者たちと協力し、コシヒカリとの交配種のコメを開発して「八田穂越」と名付け、今回の墓前祭で来賓へのお土産として配ったことを明かし、「今後、この『八田米』を食べるたびに、八田技師が烏山頭ダムに残した貢献を思い出してもらえれば」と語った。また、頼清徳総統が台南市長、行政院長(首相)、副総統と立場を変えながらも、15年前から毎年欠かさず墓前祭に出席していることについても深く感謝した。
 
黄偉哲市長は、国際情勢が不安定な現在こそ、台湾と日本の友情は一層貴重になっていると強調し、若い世代に国境を越えたこの尊い絆を継承してもらうため、台南市は日本の生徒・学生の修学旅行の誘致に力を入れ、先人が築いた偉大な建築を見てもらう取り組みを進めていると説明した。同時に、台南の生徒・学生たちが金沢を訪問することも奨励し、日本の先人たちが生まれ育った土地に触れる機会を提供していく方針を示した。
 

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