胸像「少女」は黄土水が東京美術学校(現在の東京藝術大学)の卒業作品として制作し、1920年に母校である大稲埕公学校(現在の台北市立太平国小)に寄贈したもの。長く門外不出とされていたが、2020年に北師美術館(国立台北教育大学の美術館)で開催された「不朽の青春 台湾美術再発見」展で100年ぶりに展示され、世間の注目を浴びた。
当時「不朽の青春 台湾美術再発見」展を企画し、また今回、太平国小博物館設立の責任者も務めた林曼麗氏は、「黄土水が自身の作品を母校に寄贈したのは、子供たちに幼い頃から芸術の精神を学ばせたいという思いがあったからだ。100年前のその思いに応えるため、我々はこの胸像を太平国小内に常設し、100年にわたってこの胸像を守ってきた校友たちの思いに報いたいと思った」と述べた。
林曼麗氏はまた、博物館設立には太平国小の卒業生である駱錦明氏の呼びかけと、それに賛同した多くの校友の協力があったことを明らかにした。駱錦明氏は王道銀行教育基金会の董事長であり、王道銀行(O-Bank)の名誉董事長でもある。テープカットに参加した駱錦明氏は、この博物館で行われる展示活動を王道銀行教育基金会が永続的に支援していくことを約束した。
70年前に同校を卒業した駱錦明氏は、「今後、在校生たちは毎日のように博物館の前を通るようになる。ある子は朝、胸像に『おはよう』と言い、帰宅時には『さようなら』と声をかけるかもしれない。これは目には見えない芸術教育であり、美的感覚を養う土台となるだろう」と期待を寄せた。
今回は特別に、医師である邱文雄氏が私蔵する黄土水の作品「男嬰」も併せて展示する。この作品は黄土水が1918年に制作し、1938年に台陽美術展に出品したものだ。
博物館は常設展エリア「黄土水専室」と特別展エリア「特展室」の2つに分けられる。博物館開館記念として、「特展室」では特別展「黄土水と子供たち」が開催される。黄土水夫妻に子供はいなかったが、東京では甥たちと暮らしており、甥の黄清雲(日本に帰化して幸田好正と改名)とその子孫が所蔵する貴重な史料が台湾で初めて展示されるという。