キッズスペースも併設される。(文化部)
「台北機廠」は日本統治時代の「台北鉄道工場」を前身とする。1930年にもともと北門にあった工場の松山への移転が計画され、1935年に完成し、供用を開始した。戦後は「台北機廠」と改称して、長年にわたり台湾の鉄道車両の整備、組立、保守、修理などを担ってきた。2012年にその機能が富岡車両基地(桃園市)へ移転したことで、翌年、「台北機廠」はその役目を終えた。松山というエリアが台北市の一等地であることから土地の再開発に関心が高まっていたが、鉄道文化の保存に関心を持つ議員や市民が声を上げ、2015年、約17ヘクタールの敷地全体が「国定古蹟」の指定を受けた。2016年12月には行政院(内閣)によって「台北機廠の活用と国家鉄道博物館への転換に関する実施計画」が承認され、2019年から修復工事が行われていた。
文化部によると、第1期エリアとして7月31日に先行オープンするのは、柴電工場(ディーゼル工場)、総弁公室(総合事務所)、技師養成所、材料試験所、大礼堂、大浴場の6つの有形文化財で、3つの常設展と3つの特別展を開催する。小さな子供を遊ばせることができるキッズスペースも併設されるほか、広大なエリアを南北に貫く335メートルの南北通路も公開される。
南から北へ、北から南へと人々を乗せて移動した鉄道と列車は多くの人々の記憶を記録してきた。それは創作においても重要なシーンを提供し、特に「台湾ニューシネマ」の全盛期、鉄道は映画の舞台としてしばしば登場した。今回は特別展として、こうした創作に関する作家の手稿や朗読映像も展示される。それに関してはこんなエピソードがある。作家でもある李遠部長は70歳となったとき、引っ越しのため「断捨離」を決行した。ちょうどその頃、国家鉄道博物館準備処から鉄道と文学をテーマとした展示資料として手稿を提供して欲しいとの依頼が舞い込んだ。しかし、「黄牛慢走、火車快飛」の手稿は前夜に破いてゴミ箱に入れたばかりだった。幸運にもゴミはまだ回収されていなかったため、李遠部長は破れた手稿を国家鉄道博物館に寄付することにしたという。そのときの手稿が今回、完全に修復されて特別展「文化中的台湾鉄道史」(文化の中に見る台湾鉄道史)で展示される。
国家鉄道博物館第1期エリア
開館時間:7月31日以降、火~日/09:30-17:00(月曜休館、旧正月の開館時間は別途公開する)
場所:台北市信義区市民大道五段50号
公式サイト:https://www.nrm.gov.tw
フェイスブック:https://www.facebook.com/NationalRailwayMuseumTW/?locale=zh_TW