2025/04/30

Taiwan Today

文化・社会

中元祭、霊を供養し善を積む

2011/08/11
基隆の中元祭。一人一人の霊を迎え、丁寧に供養する。(交通部観光局)
旧暦7月15日(今年は8月14日)は中元節(中元祭)。祖先の霊や供養する人のいない霊を慰め、死者の贖罪(しょくざい)を願う、一年でも重要な節句の一つだ。

中元節の由来
中元は道教の最高神である玉皇上帝の次に位置する三元神のうち、地獄をつかさどる地官が霊を贖罪する日だ。ちなみに三元神の天官が福を授ける日を「上元」、すなわち元宵節(旧暦1月15日)、水官が厄を払う日を「下元(旧暦10月15日)」といい、それぞれの節句を過ごす。

台湾の中元節は、こういった道教信仰に加え、日本のお盆の由来の一つ、仏教の「盂蘭盆」(うらぼん)などが合わさったものとなっている。人は死後、霊となってこの世とあの世の間をさまようと信じられており、祖先の霊だけでなくこの世に子孫のいなくなった霊をも供養することで、善を積むのである。

中元節の風習
台湾では旧暦7月(今年は7月31日~8月28日)を「鬼月」と呼ぶ。日本でもお盆を「地獄の釜の蓋が開く」というように、1日には「開鬼門」といって地獄の門が開き、人々はこの世の子孫のもとに帰ってきた祖先の霊を迎え入れる。同15日の中元節になると、家庭では祖先の霊の供養のため、供え物をたっぷり準備し、皿ごとに香をたく。また、各地の廟などでもさまざまな催しを行い、霊を慰める。

基隆「鶏籠中元祭」
各地の催しの中で最も有名なのが、基隆市の「鶏籠中元祭」と宜蘭県の「頭城搶孤」だ。鶏籠中元は1851年、ともに移民である福建省の泉州人と漳州人の間で起こった武力衝突「漳泉械闘」の収束後、人々が地縁の違いを越え、皆で祖先を供養することで社会の調和を目指したことに起源をもつ。1855年から続く「鶏籠中元祭」では、旧暦7月1日から12日間、開基老大公廟に灯される灯篭が圧巻だ。旧暦7月14日の夜から基隆港に灯篭を浮かべる「放水灯」が行われ、祭りは最高潮に達する。翌日の「火焼大士爺」では、霊たちがこの世で悪さをしないよう、悪い霊の頭目でのちに観音菩薩に導かれ改心した「大士爺」をかたどった大きな張りぼてに火がつけられる。

スリルと迫力満点の「頭城搶孤」。台湾からだけでなく、海外からも観光客が集まる。(交通部観光局)

「頭城搶孤」
地獄の門が閉まる「関鬼門」の日、「鬼月」最後の夜に行われる「搶孤」とは、高いやぐらの上に設けられた「孤棚」に上り、地上15階の高さまで突き出た「順風旗」を取り合う迫力満点の催し。あまりに危険なため、清朝の時代に禁止されたこともあったが、1991年に方法を改良して宜蘭県頭城で復活した。「孤棚」へ達する柱にはより難しくするため油が塗られ、男たちが5人1組でチーム一丸となり、下の人の肩の上を踏み台として人の柱を連ねながら上へ登っていく。「孤棚」の上から落ちた供え物は下の人が競って拾う。これは、中元の供養に励んだ人々をねぎらい、貧しい人の飢えをしのぐ意味もあった。争いは供え物の置かれた「孤棚」から、さらに高く突き出た「順風旗」を獲得するまで続く。「順風旗」を獲った者は神の加護があるとして、これを船に掲げて出航すると、首尾よく沢山の収穫を得られると信じられている。

基本情報・アクセス
基隆中元祭
http://www.klgf2011.com/(公式サイト・中国語)
頭城搶孤
http://jp.taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0003106&id=2613(交通部観光局・日本語)

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