2025/05/17

Taiwan Today

文化・社会

世界遺産登録を目指す台湾の自然・文化遺産(上)

2011/10/04
金瓜石の夜景。(孔世龍撮影、中華民国交通部観光局提供)

行政院文化建設委員会(文建会)は、2003年と2009年の2度に渡り、世界遺産登録を目指す台湾の自然・文化遺産を選出し、18カ所の「世界遺産の潜在ポイント」と定めた。台中文化創意産業パークでは10月7日から31日まで、これら自然・文化遺産の世界遺産登録申請作業を担当する文建会の文化資産総管理処準備室(文資処)が主体となって、同18カ所を紹介する展示会「台湾世界遺産潜在ポイント特別展」を開催する。同展をきっかけに、自然・文化遺産の国際的な水準での保存を各地方に促し、産業界や国際社会に向けても、台湾の自然・文化遺産の世界遺産登録に対する支援を呼び掛ける方針だ。

本サイトでは2度に分け、これら18カ所の概要と、世界遺産登録に有力と考えられる特色を紹介する。1回目は東部を中心とする9カ所。

(1)淡水・紅毛城および周辺の歴史建築群(新北市)

淡水はもともと先住民族のケタガラン族が住み、漢民族が開拓、その後オランダ人による貿易で発展し、宗教や建築、医療など西洋文化が取り入れられる拠点となった。また河川があるため交通の要衝ともなり、商業施設は沿岸部に、宗教施設や学校などが山あいに建てられ、全体として極めてユニークな集落を形成している。また欧州人が活動した都市エリアと対照をなすように、地元の住民の暮らしと文化が記憶として継承されていることも世界遺産登録の条件に合致している。

(2)金瓜石集落(新北市)

集落全体が金鉱にまつわる産業を中心とした歴史的、文化的遺産であり、地質や生育する植物なども研究対象となっている。特に金山の鉱区や輸送手段、冶金(やきん)施設などは生きた台湾の鉱業史である。一方、日本統治時代の高級官僚が住んだ日本家屋や、金山のトロッコなどが保存の危機にさらされていることも、世界遺産の条件に合致している。

(3)太魯閣国家公園(花蓮県、南投県、台中市)

太魯閣渓谷は厚さ1,000メートル以上、距離にして10キロメートル以上に及ぶ大理石の岩層が分布、石灰岩の生成と大理石の形成過程から台湾で最古の地質をみることができる。またフィリピン海プレートとユーラシアプレートが衝突し地殻が常に上昇、同時に立霧渓の流れに常に侵食され、雄大で特殊な地形が形作られている。さらに海抜の高低差の大きさと、高山で周囲から隔離された環境には、珍しく特徴ある植物が生息し、人の手が加わらない原生林が極めて多様な動植物を育んでいる。

(4)玉山国家公園(花蓮県、嘉義県、南投県、高雄市)

北東アジア最高峰の玉山(日本統治時代の旧称・新高山)を中心とし東は中央山脈、西は阿里山山脈に挟まれた高山群。岩層は脆く、断崖や絶壁などの地質的な景観や、台湾特有の気候で侵食されたためにできた瀑布が豊富にみられる。また海抜の高低差が大きく、極めて多様な種類の野生動物が生息し、地形など自然環境と生物の相互依存関係をみることができる。

(5)大屯火山群(台北市)

280万年前に火山活動を開始した大屯山火山群は、その後200万年以上の間、何度も激しい噴火を経て現在の形を形成。2,500万年前の地質から、これまでの地殻や地質の変動プロセスをみることができる。緯度ではサウジアラビアやエジプトなど沙漠地帯を持つ国々と同様の台湾が、多様な生態系を保有しているのは海洋や季節風の影響のほか、火山の噴火によるところも大きい。地熱や植生といった特徴や、氷河時代にルーツを持つ植物など、生態系の進化をみる上で指標的な位置付けとなっていることも、世界遺産に相応しいと考えられる。

(6)棲蘭山ヒノキ林(宜蘭県、新竹県、桃園県、新北市)

雪山山脈に属する棲蘭山は、海抜の高い山が連なる中で、深い谷に囲まれ、外から隔離、霧や雨量が豊かな生態環境を形成している。孤島のような環境の中、スギなど裸子植物の針葉樹でも、台湾特有の種が豊富に生まれた。「温暖湿潤気候山地の針葉樹林系」と学界では呼ばれる。絶滅の危機に瀕する植物種も多く、また台湾クロクマなど珍しい大型動物も生息している。

(7)プユマ遺跡および都蘭山(台東県)

石板棺や玉器、大規模な集落の遺跡など、有史以前の文化を代表するプユマ遺跡は、西海岸の先史の文化と通ずるものがあり、また南島民族(オーストロネシア語族)の文化とも関連のある重要な遺跡である。出土した文物や標本、建築物の遺跡のほか、石の棺による埋葬といったプユマ人の祭祀の儀礼など無形文化財としても高い価値がある。

(8)蘭嶼集落および自然景観(台東県)

先住民族のヤミ族(タオ族とも)は、蘭嶼島の過酷な気候や、強風や狭い長い海岸などの環境に合わせ、半地下で雨風をしのぐ家屋といった独特の建築文化を生み出した。また、山や狭い海岸、火山の溶岩などに加え、1年で200日以上に及ぶ雨季が、変化に富み、神話にも伝えられるような美しい景観を作り出した。

(9)屏東パイワン族の石板屋集落(屏東県)

パイワン族の歴史と文化を極めて整備された形で今に伝える集落。人類学や建築学の研究の対象となるほど保存が行き届いている。家屋や採石場、水源地が集落と山に広がり、伝統的な暮らしを証言する歴史的な遺産となっている。また、日本統治時代に住民が平野部に移住させられたため、保存の危機にさらされていることも、世界遺産としての登録に相応しい。

「台湾世界遺産潜在ポイント特別展」の概要やアクセス方法は、公式サイトhttp://www.2011pwhst.com.tw/で紹介。また18カ所の詳細は日本語でも紹介http://twh.hach.gov.tw/TaiwanJ.action。

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