台湾の先住民は総人口の約2%を占める。現在、政府が認定する先住民族には、アミ族、タイヤル族、パイワン族、ブヌン族、プユマ族、ルカイ族、ツォウ族、サイシャット族、タオ族(ヤミ族)、サオ族、クバラン族、タロコ族、サキザヤ族、セデック族の14民族がある(分布に関しては特別報道「先住民族は台湾独特の美しき宝」を参照)。それぞれに独自の文化と言語、風俗・習慣、社会構造を持ち、伝統的な風習も少しずつ違っているため、極めて特色豊かなさまざまな形式の祭典を生み出した。14民族の主な祭典を以下に紹介する。
◎アミ族の祭り――「捕魚祭」、「豊年(豊作)祭」、「馬里古拉艾文化節」、「海祭」
「捕魚祭」は、花蓮と台東の両県に分布する海や河川で漁をするアミ族が毎年5月に行うもので、酒や肉、餅を海辺で神に捧げ、大漁を祈願する。漁は年長者らが指揮し、若者が手分けして魚を捕り、捕れた魚はまずひとまとめにした上で、年齢に従って分けていく。余った魚介はさらに年長者が、年齢の低い者や、優秀な働きをみせた若者に与える。捕魚祭は、祭りの手順を通じてアミ族の信仰と文化をアミ族の人々に伝える場でもあり、年長者を敬う美徳を心に刻み、さらには結束の精神を養うものでもある。
もう一つのアミ族の文化を反映するのが、毎年7月から8月にかけ行われる「豊年祭」である。豊年祭は、「霊を迎える」、「霊を宴でもてなす」、「霊を送る」という3つの段階に分かれている。厳格には男性を主体としたものであり、年の若い男性が暮らしの中の礼儀と歌、舞踊を学ぶという内容になっている。古くは女性の参加が禁止されていたが、近年では射的などの競技に加わり興を添え、観光客の飛び入りも受け入れられるようになっている。
「馬里古拉艾文化節」は、伝統的な舞踊と歌謡で、先住民固有の優れた文化を表現するイベント。「海祭」は海での大漁と、漁の無事を祈る祭典である。

◎タイヤル族の祭り――「祖霊祭」(ma hou)、「播種祭」
タイヤル族は台湾での分布の範囲が最も広い先住民で、北部、中部、東部の山間部にそれぞれ散らばって居住しているため、祖霊祭の作法にもやや違いがある。一般的には、旧暦7月半ばの夜明けから早朝に行われることが多い。供え物には酒、アワのケーキ、農作物、果物、魚介を用いるが、イノシシの肉を漬けたものだけは用いることができない。これは伝説で、祖先が暮らすあの世ではイノシシが狩猟犬の役割を果たし、イノシシを殺せば祖先が狩りができなくなり、祖先の霊を怒らせることになると伝えられているからである。
また、タイヤル族の祭りで、最も重要で、かつ禁忌が最も多いのが「播種祭」である。理由は、穀類は主要な農作物であり、もし豊かに実らなければ一年の生計に重大な影響を及ぼすからである。してはいけない禁忌には、「祭りの前に火をおこし、火種を途絶えさせてはならない。さもなければアワの苗の芽が出なくなってしまう」、「イネを枯らさないよう、草を刈ってはならない」、「儀式が終わり、その場を離れるときには振り返ってはならない」といったものがある。