台湾の人たちの信仰と儀式は生活の上で様々な形となって現れる。先祖崇拝や神々への信仰、節句や季節に合わせた行事、まじないや法事、占いなどである。台湾の伝統的な宗教は一般に、仏教、道教、一貫道、及び民間信仰だとされる。ここでは道教について紹介しよう。 道教は台湾で最も信仰されている宗教である。内政部の統計によると、2011年末の時点で道教は台湾全土の寺や廟の78.2%を占め、最大となっている。「道」は「歩む道」の意味であり、宇宙を動かす自然の法則だと考えられている。道教では「道」が最高の信仰である。老子を教祖とし、人々が修練を積むことで仙人になれると信じるものである。 道教は多神教に属し、民間の伝説や歴史上の人物と結びついたものも多い。台湾で良く知られるのは、「玉皇大帝」(道教における天界の指導者で地位の最も高い神の一つ)、媽祖(海上の守護神)、関聖帝君(三国時代の関羽。忠と義をいずれも全うしたことで神格化された。軍人、警察の守護神でもある)、財神(財福を司る神)、文昌帝君(学問の神)、土地公(福徳正神とも呼ばれる。地方の末端行政単位での神で、その土地を守る)などである。
道教は17世紀に台湾に伝わり、道教の聖職者は「道士」(台湾語では「師公」)と呼ばれる。台湾の道士は「度生」と「度死」の二つに分けられる。「度死」は葬儀を専門的に執り行う人で、「度生」は幸せを祈ったり、邪気を追い払ったりする者である。道教には流派も多い。自宅で修行するか、家を出て修行するかで分類した場合、前者は「在家道」(「符籙派」、「火居道」とも呼ぶ)となる。修行者(道士)は妻を娶り、子をもうけることが可能で、信者たちと共に暮らし、コミュニティーにおける道教の儀式を担当する専門家となる。後者は「出家道」となり、道士は長期にわたり、道士の集まる施設「道観」で暮らし、修行に専念する。「丹鼎派」とも呼ばれる。 道教の宗教施設は「廟」であり、正確な名称は「宮」あるいは「観」である。台湾の廟には共通の特色がある。道教の廟の建物は左右対称が求められ、建てる際にはまず、風水で理想的な場所を選ぶ。建物の左側が上位とされ、「龍辺」と呼ばれる。右側は下位で、「虎辺」と呼ぶ。建築物は祭られる神の位を表し、地位が高い神であればあるほど、門が多く設けられる。装飾は極めて豪華で芸術の粋を集めたものとなっている。また、台湾の人たちの宗教に対する観念は寛容で、仏教と道教が一つとなっている。このため、一つの廟の中に異なる神が祭られるという、台湾土着の廟の特色が生まれている。