台湾は、サンバーの分布地のうち世界で最も東に位置する。また、「台湾水鹿」の生息地はサンバーの生息地のうち緯度と海抜が最も高い地域の一つ。王教授の研究によると、「台湾水鹿」は南と北に分かれて遺伝的分化が進んだものとみられる。奇莱山(南投県・花蓮県)、磐石山(花蓮県)、雪山(台中市・苗栗県)を境に、1種は太魯閣の陶塞渓(花蓮県)の中流や下流、雪覇国家公園(新竹県・苗栗県・台中市)の翠池(苗栗県)や志楽渓(台中市)などに生息するもので、遺伝的な特徴は、台湾の他の地域に生息する種と明らかに異なっている。
もう1種は、中央山脈に住む種で、南湖陶塞線(台中市)、奇莱山地区、磐石山地区、丹大地区、大武山(台東県)が生息地である。うち、丹大地区に棲むものは、2種双方の特徴を併せ持ち、「台湾水鹿」の共通の祖先だと推測される。研究機関によると、2種が分化したのは5万8,000年前から11万8,000年前で、おおよそ台湾における最終氷期に当たる。
太魯閣国家公園管理処(花蓮県)は、研究チームがこのほど構築した「台湾水鹿」の生息地選択モデルとミトコンドリアDNAのデータベースは、「台湾水鹿」の種の保護を管理する上で、重要なよりどころとなると説明した。