現在、キャベツは年中食べられるが、最も生産に適しているのは秋から冬にかけて。しかし、台湾の人たちは甘く、シャキシャキとした食感のキャベツを夏にも食べたがるため、気温の低い山の上で栽培されることも多くなった。また、高山で採れたキャベツの食感はさらによいため、台湾の山地傾斜地における水と土壌がキャベツ生産業の拡大によって侵食されている。記録映画『天空からの招待状(看見台湾)』での空撮映像で台湾の人たちはこの状況を目の当たりにした。
行政院農業委員会(日本の農水省に相当)農糧署によると、キャベツは暑さを嫌うため、秋に入る11月から翌年の3月までが平地で生産する場合の収穫期。2月から8月まで、高山でキャベツが栽培される光景が見られる。
農業委員会台中区農業改良場はこのため、「台中1号」と「台中2号」というキャベツを開発、すでに優秀なキャベツ専業青年農家の蔡宜修さんが台湾中部の彰化県で約10~20ヘクタールを用い、生産販売グループのメンバー十数人と共に栽培中で、スーパーマーケットに提供したところ好評だという。彰化県は彰化平原と呼ばれ、主に平地。
多くの人が試食した結果、高山で採れたキャベツとの違いに気付く人はおらず、さっぱり、シャキシャキとし、甘みがあり、見た目もきれいだと好評だった。 また、高山でキャベツを栽培する場合、1ヘクタールの畑を借りるのに年間100万台湾元(約359万日本円)が必要な他、施肥や作業員の雇用、輸送などのコストがかさむ。平地栽培の方がずっと容易で、コストも大幅に抑えられるという。
「台中1号」と「台中2号」の種苗を提供する欣樺種苗貿易会社は市場での反応を喜ぶと同時に、最も重要なのは台湾における山地傾斜地の水と土壌の悪化を止められることだと強調。高山におけるキャベツ栽培地の拡大を食い止め、平地での栽培に切り替えさせていく。同社では今年の春から夏にかけては平地での「台中1号」、「台中2号」の栽培を普及させ、消費者が1年を通じて経済的でおいしいキャベツを食べられるようにしたいと話している。