財団法人工業技術研究院(工研院=ITRI)のイノベーション能力、並びに特許の影響力が世界的に評価されている。工業技術研究院では「特許の高付加価値化」戦略が大きな成果をあげており、これまでに取得した特許件数は累計3万件近く。有効な特許件数も1万7,500件に達している。平均で職員15人あたり1件、米国での特許を生み出していることになり、そのイノベーション能力は世界1位だという。優れたイノベーション能力を称えるため、クラリベイト・アナリティクス(Clarivate Analytics=前身はトムソン・ロイター社のIP & Science事業部門)は23日、工業技術研究院に「Top 100 グローバル・イノベーター」賞を贈った。
工業技術研究院が目指すのは技術革新のみならず、産業の川上・川中・川下の全体的な技術を同時に発展させること。生み出す特許は「上位型」の強みと多数の特許の組み合わせとなる必要がある。例えば工業技術研究院が近年開発した、STOBA高安全性リチウムイオン電池の新技術は150件に及ぶ特許の組み合わせにつながっている。台湾ではすでに電池メーカー5社に技術が移転されており、一部のメーカーはSTOBA爆発防止電池を積極的に開発、蓄電設備への運用を目指している。
クラリベイト・アナリティクスのIP and Standards事業部門責任者、Daniel Videtto氏はこのほど台湾を訪れて、工業技術研究院に「Top 100 グローバル・イノベーター」賞を授与した。そして授与式の席上、「我々独自の分析方法によって、世界で最も優れた技術革新能力を持つ研究機関を表彰できることは光栄だ。Derwent World Patents Index(DWPI)のデータベースにある特許の付加価値に関するデータは、発明特許の数量の評価、さらにはイノベーションのクオリティ、世界的な影響力、特許影響力の比較を可能にしている。2014年に続いて再び工業技術研究院に『Top 100 グローバル・イノベーター』賞を贈れることをうれしく思っている。今回の受賞は、工業技術研究院が優れた発明を絶えず目指してきた成果を再び明確にするものであると同時に、工業技術研究院が世界をリードする先端技術の研究開発機関であることを示す根拠でもある」と述べた。
工業技術研究院の劉文雄院長によれば、同研究院は「高品質の特許で付加価値を高める」戦略をとっている他、特許の世界展開を推進している。現在までに海外で取得した特許は2万8,598件。発明特許はそのうち98%以上で、イノベーションの水準を高く保っている。また、アジアIPエリート(Asia IP Elite)には5年連続で入っている。
工業技術研究院による技術移転件数と国際的な評価は職員たちの努力により著しい進歩を見せている。2016年を例にとると、国際的に著名な研究機関と比較しても、工業技術研究院が米国で取得した特許は376件で1位。2位だったドイツのフラウンフォーファー研究機構(Fraunhofer=206件)の1.83倍に達した。特許を生み出す能力では、工業技術研究院の場合、職員15人で米国の特許1件を取得している割合で、2位だった日本の国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST=職員48人あたり1件)に比べて3.18倍の能力を持つことになる。
工業技術研究院は産業とのリンクを強化するため、「特許契約」モデルを確立している。企業は提携契約を通じて工業技術研究院に商機につながる新技術の開発を委託、開発の成果と特許は企業側が持つ、もしくは工業技術研究院と共有する。この「特許契約」モデルにより、工業技術研究院はすでに企業5社と提携しており、半導体、情報通信技術(ICT)、ディスプレイなどの分野で特許取得を進めている。そのうち情報通信技術分野では、5G(第5世代移動通信システム)に関する特許が焦点となっている。
近年、経済部(日本の経産省に相当)と科技部(日本の省レベル)など政府機関にによるサポートの下、工業技術研究院は産官学、並びに研究機関の持つ知的財産の力を結びつける役割を担うようになっており、学術界における特許や研究開発の成果の商品化を助けることで、新技術の産業化を促進している。南台科技大学(台湾南部・台南市)が開発した、オートバイ用超低燃費エンジンは工業技術研究院及び財団法人車両研究テストセンター(Automotive Research & Testing Center, ARTC)の指導と協力の下、次世代省エネエンジンの原型となり、実測でその優れた能力が明らかになった。昨年には台湾のオートバイメーカー大手である宏佳騰動力科技株式会社(AEON MOTOR Co., Ltd.)に技術移転されている。