科学技術の発展トレンドの指標となる家電見本市、米国のコンシューマー・エレクトロニクス・ショー (Consumer Electronics Show, CES) が8日から4日間開催されている。財団法人工業技術研究院（ITRI）は今回、経済部（日本の経産省に相当）によるサポートの下、台湾エクセレンス館で「高積載量・長飛行時間ドローン（Hybrid Power Drone with High Payload and Duration）」と「持ち運び自由なUVC LED流動水殺菌システム（Portable UVC LED Water Sterilizer System）」の2つの新技術を紹介。また、工業技術研究院のスタートアップである創浄科技株式会社（ELECLEAN）も、ブースで「e立浄消毒噴霧製造機（ELECLEAN Disinfectant Spray）」を展示するなど、無人経済と洗浄ビジネスのチャンスに工業技術研究院とスタートアップが手を携えて取り組む姿が示された。世界経済に新たなブルーオーシャンを切り開くため、スマートシステムを統合する力が発揮されることになる。
工業技術研究院は開幕前に記者会見を開き、展示内容などを説明。工業技術研究院のドローン技術は、高電力密度の発電機と複合式デュアルプロペラ推進モジュールを統合したもので、高い積載能力と長い飛行時間という長所を持つ。このため広大な農地での農薬及び肥料の散布などに応用すれば人手を省ける他、人が長時間噴霧器でこれらを散布するために起きる人体への影響も減らすことが出来る。工業技術研究院ではまた、災害時には被災地の空撮調査や支援物資輸送、また通信の臨時中継器として応用すれば心強く、被災者におもいやりを届ける技術になると話している。
オーストラリアで最も権威のある科学技術メディア、Tech Guideの記者、Stephen Feneckさんは工業技術研究院のドローンを見ると、「送電システムの巡回検査や農業、山での遭難者の救助や物資の運搬、救命胴衣の投下など、何でもできるドローンだ！」と絶賛。米国の国営放送、ボイス・オブ・アメリカの記者、Kennes Odongoさんもこのドローンが持つ可能性を高く評価し、4Gや5G（第4世代や第5世代の移動通信システム）の技術が成熟し、通信効率がいっそう高まれば、環境保護に役立つモニタリングに応用可能だと指摘した。また、ロイターの記者、Jane Lanhee Leeさんはこのドローンが持つ技術の機能と応用方法に強い興味を示し、会場にいる研究スタッフに発売時期などを度々質問していた。
また、「持ち運び自由なUVC LED流動水殺菌システム」はインドで最も知られるネットメディア、Indiantelevision.comの興味を引き付けた。同メディアの記者、Anil Wanvariさんは、インドでは清潔な水を飲むことが難しいとした上で、工業技術研究院の「流動水殺菌システム」は大変実用的で、インドの人たちにとって日々の問題を完全に解決することが出来ると期待した。Anil Wanvariさんは、「インドは清潔な飲料水が足らない問題に悩んできた。この技術は携帯可能な便利さに加えて、太陽電池で動かせるのでインドのニーズにぴったりだ」と絶賛した。
著名な機械設備会社、JDI Enterprises Inc.のJohn Ivancoさんも、「持ち運び自由なUVC LED流動水殺菌システム」の技術に注目。米国中西部では水道の普及が不十分で井戸水に頼らなければならないが、往々にして水質面で問題がある。John Ivancoさんはこのため、「このシステムが米国で発売されれば、中西部の人々を大いに助けられる。特にサイズが小さく、持ち運びが出来る他、除菌率も99.9％以上であり、中西部の飲料水の安全性を完全に確保できる」と期待した。
「高積載量・長飛行時間ドローン」と「創浄科技」による「e立浄消毒噴霧製造機」はその技術、デザイン、品質など様々な面が評価され、CES 2019イノベーション賞を獲得した。2018年のR&D100アワードを受賞したばかりの「持ち運び自由なUVC LED流動水殺菌システム」は、特許技術の水流構造デザインと独特のUVC LED流動水モジュールで、使用する水を即時に浄化する。水処理の巨大な市場に新たな時代をもたらすものと期待されている。