米国に本社を置くクラリベイト・アナリティクスは12日、「ダーウェント・トップ100グローバル・イノベーター・アワード」の授賞式を行い、台湾の政府系研究機関である工業技術研究院(ITRI)も選出された。同賞ではITRIが科学技術のイノベーションと特許において優れた成果をあげたとし、特許数、特許の成功率、グローバル性、引用における特許の影響力の4つの選考基準でいずれも際立っていたと評価した。
同賞に選ばれた研究機関はITRIのほか、ドイツのフラウンホーファー研究機構、フランスの原子力庁と世界でも3カ所のみ。またITRIの受賞は3度目で、アジアでは最多。過去5年間の特許成功率は81.53%と世界でも極めて高い水準だ。なお、ITRIの特許は科学技術研究の核心技術に属するもので、一般の事業者とは異なる。
クラリヴェート・アナリティクスによる同賞は2011年に始まり今回で8年目。世界各地の高いイノベーション力を持つ機関を詳しく紹介し表彰している。ITRIについて、4つの評価軸ですべて目を見張るものがあったが特に引用における特許の影響力、つまり第三者による引用が際立っており、この点において選出された100社・機関のうち1位、つまりトップの中のトップであり、世界の産業におけるイノベーションの影響力は非常に高いものがあると評価。今年再度の受賞となったことは、ITRIの技術と認知度、産業イノベーションへの影響力の現れであり、優れたイノベーションの質と高い技術が世界に展開し、台湾がさらに世界の舞台で引き続きイノベーションの実力と影響力を発揮することを期待したいとした。
ITRIの劉文雄院長は、イノベーション追求の過程では研究開発・保護・商業化という完全なサイクルをカバーする「イノベーション・ライフサイクル」という要素に合致するかを非常に重視していると表明。ITRIの強みは研究開発だけでなく、研究開発の質と特許の影響力をより重視し、常に質の高い特許で台湾の産業が国際市場における競争で確かな地位を獲得するのを支援し続けていると説明した。また、台湾の産業が世界大手が何重にも張り巡らせる特許の壁を打破し、台湾ブランドの価値を引き伸ばしてほしいとしている。
ITRIの技術移転・法律センターの王鵬瑜主任は、「アイディアを発掘し高付加価値の特許をより確実に活かすこと」を戦略に、将来的な市場のニーズに照準を定め、主要各国に特許を展開していきたいと表明。また6年連続で知的財産分野におけるアジアのトップを意味するアジアIPエリートを受賞。2018年末時点の存続期間内特許は累計1万7,303件、うち発明特許が98%を占める。特許技術はオプトエレクトロニクス、情報通信技術(ICT)、機械、材料化学、バイオテクノロジー、グリーンエネルギーなど6つの研究開発領域を広くカバーする。
ITRIは近年、知的財産権と革新的な特許開発で成果を上げて注目を集めるとともに、企業の高度化を支援している。2017年にはソフト・ハードを統合した技術特許と訴訟サービスで、台湾のロボット掃除機メーカー松騰実業(マツテック)を支援し、世界大手のiRobotとの和解達成に尽力した。松騰はITRIの幅広いAIロボット技術を利用し、10年以上かけて蓄積した100件超の特許を反訴の武器とすることができたという。ITRIが提供したロボットの核心技術としては、検知ボディ、構図のシステムと方法、定位システムモジュール、移動プラットフォーム、清掃ユニットなど核心的な特許ポートフォリオを備え、これがiRobotとの和解と訴訟取り下げにつながった。さらには米国市場の掃除機ロボットの主なサプライヤーである同社と提携・協力に発展している。