ソーシャルビジネス(社会的企業)はNGO(非政府組織)とは違い、社会への思いやりと収益力を兼ね備えた会社形態であり、企業の社会的な責任(CSR)を強調する一方で持続可能な経営も目指している。近年それを重視する動きが世界的に高まっており、台湾でも政府と民間が積極的に参与するようになっている。
星展銀行(DBS Bank Limited)の台湾法人では2年ごとに台湾における社会的企業の発展状況を調査しており、今年は台湾経済研究院、大手新聞社・聯合報の「願景工程(Vision Project)」と協力して「2019年社会創新大調査」を実施した。「社会創新」はソーシャル・イノベーション(社会問題を解決するための革新的な仕組みと実践)のこと。この調査によれば、アンケートに応じた人のうち社会的企業について聞いたことがあると答えた人は30.6%に達した。2017年には約20%にすぎず、10ポイントあまり増えたことになる。しかし、社会的企業の考え方に賛同する人の割合は減少。今回は回答者の75%以上が賛同したが、その割合は前回の調査に比べて3.3ポイント低かった。
社会的企業の考え方はまだ新しく、ソーシャル・イノベーションを実践する企業も多くは出来てから日が浅い。まだ若く、優良ながら小規模な企業といったところ。調査の結果、社会的企業のうち設立から1年以上5年未満というケースが48.8%を占めた。社会的企業全体の半数近いことになる。また、資本金も100万台湾元(約351万日本円)以下、職員数5人以下という企業が半数を超えた。
一方、特筆すべきこととして女性の積極性が挙げられる。一般の起業と比べて、女性はよりソーシャル・イノベーションに身を投じる傾向がある。調査によると、ソーシャル・イノベーションを行う企業の起業家のうち女性が占める割合は43.1%で、台湾の一般中小企業における女性創業者の割合(36.4%)を上回る。
「2019年社会創新大調査」は経済部(日本の経産省に相当)中小企業処が指導する下、台湾経済研究院が一般市民とソーシャル・イノベーションを行う企業を対象に電話アンケートを実施した。今年3月に、コンピューターを使った電話アンケートシステムによって台湾本島及び離島地区の20歳以上の市民を選び出し、2,144人分の有効な回答を取得。ソーシャル・イノベーションを行う企業については、台湾全土のソーシャル・イノベーション推進企業、561社にアンケートを送付した結果、約52.9%から回答を得た。