行政院農業委員会(日本の農水省に相当)の桃園区農業改良場は19日に開いた記者会見で、国産バニラビーンズの加工技術で画期的な成果を得たと明らかにした。国産バニラビーンズながらバニラの香りの主要成分であるバニリンの量が海外の最高級品を上回り、1本から従来の2本分の量が採れるという。
桃園区農業改良場作物改良課の副研究員である葉志新さんによると、バニラの応用範囲は広く、60%はアイスクリームやケーキなどのスイーツや飲み物、33%は化粧品や香水、そして7%はアロマセラピーなどに使用される。価格は高価な香料であるサフランに次ぐもので、「香料皇后」(香料のクイーン)とも呼ばれている。国際間では現在1キログラム600米ドルで取引され、銀の500米ドルあまりを上回る。
台湾では2007年に海外から導入してバニラの栽培に乗り出し、ここ2年で国産のバニラビーンズが相次いで市場に登場した。1本100台湾元(約344日本円)から200台湾元(約688日本円)で、1キログラム(300本)が3万台湾元(約10万3,200日本円)から6万台湾元(約20万6,400日本円)という高価な品物である。
葉志新さんは5年かけて加工技術を研究し、このほど画期的な成果にたどり着いた。この技術ではバニリンを従来以上に得ることが出来る。その含有量は3.1%、さらには3.5%も可能。これに対し、マダガスカルの最高級品でも含有量は1.71%に過ぎない。インドネシアの最高級品、パプアニューギニアの最高級品に至ってはそれぞれ1.01%、0.81%だという。
技術的な最大の違いは、海外では一般的に天日干しで発酵させているのに対して桃園区農業改良場では自主開発した発酵設備で発酵を行っていること。温度と湿度を制御することで発酵と乾燥のプロセスを改良した。これによりバニリンの含有量を増やすことに成功。完成までのプロセスはバニラの収穫から洗浄、等級分け、摂氏65度の水を用いた加熱処理(ブランチング)、7日から14日間の発酵、1カ月間の常温乾燥と続き、水分が25%から38%になったところで再び等級を分け、最後に木箱に入れて4カ月間熟成させる。このプロセスには6カ月間が必要。
葉さんによると、現在は1ヘクタールあたり2,000キログラムから3,000キログラムの新鮮なバニラビーンズが収穫でき、最終的に加工を終えた製品は約400キログラムから600キログラムとなる。作付け面積は現在10ヘクタールあまりであることから、量産が始まれば4,000キログラムのバニラビーンズが生産できる見通し。過去最も多かった2016年の輸入量、7,000キログラムの半分を国産でまかなえることになり、生産額も1億2,000万台湾元(約4億1,300万日本円)から1億5,000万台湾元(約5億1,600万日本円)が期待できる。欧米や日本の業者はすでに商談を始めており、1キログラムに最高で1,000米ドルの値がついているということ。