台湾南部・高雄市の青年農家、劉士輔さんが、同市六亀区で100年以上生えている在来種のチャノキを加工した「国有林南鳳山野生茶」など4種類の茶で、フランスの非営利団体AVPA(The Agency for the Valorization of Agricultural Products)が行うお茶の国際コンテスト「Teas of the World Contest」で銀メダル2個、銅メダル1個、特別賞1個を獲得した。「国有林に生える野生の茶」で台湾が世界的な賞を受けるのは初めてで、台湾のチャノキの名を世界にとどろかせたことになる。
六亀区は台湾で在来種のチャノキが最も多いエリア。数百年にわたって山間部に高木が育っており、肥料も農薬も全く使われていないにもかかわらず高さは2階建てから4階建ての建物に相当する。このためお茶農家は木によじ登らなければ茶摘みが出来ない。劉士輔さんは「八八風災」(=八八水害。2009年8月に台風モーラコットによって台湾の中南部及び南東部にもたらされた水害)が起きてから故郷に戻って家業の復活に取り組み始めた。そしてエンジニアとしての研究精神を発揮、六亀区のチャノキから「野蜜紅茶」、「青茶」を創り出して3年連続で「Teas of the World Contest」で賞を獲得した。
そして劉さんは最近さらに、「国有林南鳳山野生茶」、「紫芽山茶」、「野蜜紅茶」アドバンス版、「青茶」の4種類の茶葉を開発、AVPAの第3回「Teas of the World Contest」に参加したところ銀メダル2個、銅メダル1個、特別賞1個を受賞した。そのうち「国有林南鳳山野生茶」は六亀区の国有林に生えている野生の茶を加工したもので、台湾における国有林の野生茶が「Teas of the World Contest」で賞を受ける最初のケースとなった。
注目すべきは、「国有林南鳳山野生茶」が標高1,500メートル以上にあり、樹齢100年を超える高木で採れたものであること。チャノキの成分は様々で把握が難しいが、劉さんの父親、劉文華さんは製茶経験が豊富で、今回は親子が協力して「野生のお茶」に挑戦、焙煎の具合や温度、発酵過程を調整して変化に富んだ風味を生み出した。その味は澄んでまろやかな一方、苦みや渋みはない。花の香りも帯び、口の中では花の蜜も感じられる。そしてのどごしでは自然な甘みがよみがえるなど、多くが重なり合った風味に満ちているという。
「国有林南鳳山野生茶」を創り出すため劉士輔さんが実験に使った野生の茶は120キログラム。劉さんは、小売価格が600グラムで1万台湾元(約3万6,600日本円)だとして計算すると、200万台湾元(約732万日本円)費やしてようやく最高級の「六亀山茶」を完成させられたと話している。