政府の「新南向政策」に呼応すると共に企業が東南アジア進出を目指すためのニーズに対応するため、台湾南部・高雄市の経済発展局が地元の国立高雄科技大学と協力、「科技創業与事業経営-対接南向市場」(科学技術を事業とする起業と事業経営-「南向市場」へのドッキング)修士クラスを開設して東南アジアの市場進出に向けた「超級生力軍」(スーパー新鋭部隊)の育成に共同で乗り出すことになった。
「新南向政策」とは政府が東南アジア、南アジア、ニュージーランドとオーストラリアの計18カ国との幅広い関係強化を目指す政策。「南向市場」もしくは「新南向市場」はこれらの国を経済的な市場としてとらえた言い方。
同修士クラス開設に向けた活動はすでに22日にスタート、地元高雄市にある国立中山大学、国立高雄科技大学などで説明会が開催されることになっている。高雄市経済発展局の廖泰翔局長は東南アジア籍の学生及び「南向市場」に興味のある本国籍の学生が「超級生力軍」養成のチャンスを生かすよう呼びかけている。また地元の企業に向けては、今後もオンラインでの商談会を企画するなどして高雄市の企業と共に「新南向市場」での商機を開拓していく姿勢を強調している。
廖泰翔局長によると、同クラスでは40名を募集。対象は東南アジア籍の学生や「僑生」(華僑の子女の学生)を優先。また、「南向市場」に興味のある本国人学生も応募が可能だという。カリキュラムには企業参観や人材管理、顧客開拓、経営実務などが挙げられている。
経済発展局によれば、「新南向政策」の対象国から台湾にやって来る留学生は毎年約3万5,000人で、台湾南部の台南市・高雄市・屏東県で学ぶ東南アジア籍の学生と「僑生」は5,600人を超える。機械や土木、情報通信技術などエンジニアリング関連の学問を学ぶ割合が高い。同局では、これら台湾で学ぶエリートたちは母国の背景があるほか、台湾文化も理解しており、高雄市の企業が科学技術を用いたソリューションや商品を東南アジアの市場に輸出したり、東南アジアの情報を得たりする上で理想的な「親善大使」になりうる人材だと考えている。
廖泰翔局長によると、高雄市経済発展局は昨年11月末、高雄市の企業10社と共に中華民国対外貿易発展協会(TAITRA、日本では「台湾貿易センター」)がオンラインで開いた「台湾エキスポ in マレーシア」に参加。その結果、高雄市の企業は海外の見込み客29社とオンラインでの商談会を開くことが出来た。経済発展局では今年もこうしたオンラインでの商談会を企画していく考えだという。
国立高雄科技大学国際処の王嘉男国際長は、台湾で就学する東南アジア籍の人材は専門技術を学んでいるほか、母国の市場に敏感な特性があると強調、今回の修士クラスによってこれらの人材が地元高雄市の企業に加わることになれば、学生にとっても東南アジア諸国での市場開拓と事業経営を目指す台湾にとっても「ウィン-ウィン」が実現するだろうと期待した。また、国立高雄科技大学で産業経営学を学ぶベトナム人大学院生、Tuan Dangさんは、台湾の企業に入社して自分が、その企業が母国の市場に進出するための架け橋になれるよう強く希望、台湾で学習した成果を故郷に持ち帰り、産業のレベルアップや変革につなげたいと話している。