格付け会社S&Pグローバル・レーティングはこのほど、台湾の長期発行体格付けを前回評価の「AA-」から「AA」に引き上げた。短期発行体格付けは債務履行能力が極めて高い「A-1+」、格付け見通しは「ポジティブ」とされた。新型コロナウイルスの抑え込みに成功し、経済の安定した成長が見られることなどが高く評価された。
前回、台湾の長期発行体格付けに変化があったのは2002年2月18日のこと。それまで「AA」だった格付けが、「AA-」に引き下げられた。今回の「AA」復帰は19年ぶりとなる。台湾の経済成長の見通しが他国と比べて明るいことが、今後も台湾の債務履行コスト抑制につながると判断された。
S&Pグローバル・レーティングは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が続く中、台湾が感染症の抑え込みに成功していること、それに加えて外部からの強い資金流入と競争力の高い民間企業の存在が、2020年も台湾経済を急速に成長させたことを評価した。
S&Pグローバル・レーティングは、台湾の新型コロナウイルス対策は最も成功した例の一つと言えると分析。政府はロックダウンなどの強硬措置を採取することなく、世界がリモートワークに移行する中で生じたICT製品のニーズ増加の恩恵を受け、台湾の輸出産業は大きく成長。その結果、台湾経済は新型コロナ以前よりも良好なパフォーマンスを見せたと説明している。
一方でS&Pグローバル・レーティングは、台湾と中国の関係が依然緊張状態にあることを指摘している。中国と台湾の現状はその緊密な経済・貿易関係によって維持されているとの認識を示しながらも、すでに高まっている中国との緊張は、台湾の経済や財政を一気に悪化させるリスクをはらんでいると述べている。
S&Pグローバル・レーティングはまた、台湾の格付け見通しについて、外部からの強いニーズが台湾の経済成長を押し上げるとの見通しを反映し、「ポジティブ」に引き上げている。