行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)は20日、嘉義県(台湾中南部)で「通い容器」を使った嘉義県産パイナップルの対日輸出に関する記者会見を開いた。農業委員会の陳吉仲主任委員(=大臣)、嘉義県の翁章梁県長(=県知事)、陳明文立法委員(=国会議員)らが、嘉義県産パイナップル15.6トンがコンテナに積み込まれ、日本へ向けて出荷されるのを見送った。
この日、日本へ向けて出荷されたパイナップルは、日本の大手スーパーマーケットやコンビニなどで販売されるもの。日本の消費者は、カット済みのパイナップルを好むことから、今回は段ボール箱に入れる従来型の梱包ではなく、繰り返し使えて青果輸送の国際規格にも合致した「通い容器(リターナブル容器)」を利用した。産地(台湾)の集荷場で冠芽(クラウン)をカットしたパイナップルを「通い容器」に入れて出荷。物流業者がコールドチェーン輸送で日本へ運び、パイナップル加工工場へと直接搬送する。「通い容器」はレンタル会社によって日本で回収・洗浄された後、台湾へ送り返され、再び使用される。
嘉義県農業処によると、「通い容器」の利用は環境に配慮したもので、廃棄物処理を減らすという国際的趨勢にも合致している。また、従来の段ボール箱よりも強固なため、輸送の際にぶつかったり、押しつぶされたりしてパイナップルに傷がつくのを減らすことができる。さらには、段ボール箱よりも通気性の良い設計になっているため、コールドチェーン輸送の効果維持を助けることができるなど、商品の質と輸送温度の安定性の両方を確保することができる。また、冠芽をカットしたパイナップルは貯蔵空間を増やし、有害生物の残留を減らすというメリットがある。
嘉義県におけるパイナップルの作付面積は約1,500ヘクタール。年間生産量は5万9,000トン近くに達する。台湾における生産量シェアは13%を誇る。生産する品種は、日本に多く輸出されている「金鑽パイナップル」が中心だ。昨年3月、中国政府が台湾産パイナップルの輸入を一方的に停止したことを受け、海外向けパイナップルの輸出先を日本へ変更した。その結果、昨年の輸出量約2.9万トンのうち、日本向け輸出が約1.8万トンを占め、単一市場への依存から見事脱却を果たした。
陳吉仲主任委員によると、冠芽をカットすると、40フィートコンテナに入るパイナップルの量は17トンに増える。つまり、コンテナ1個当たり、パイナップルの量を少なくとも3トン分増やすことが可能になる。台湾は今年、すでに1万4,000トンのパイナップルを海外に輸出している。これからも海外への輸出は増え、年間3万トンを超える見通しだ。陳吉仲主任委員は、これによって産地の価格は一定水準が保たれ、中国という単一市場への依存度を大きく解消することができると期待を寄せている。