トランプ米大統領は9日午後、同日発動したばかりの相互関税の上乗せ部分について、一部の国と地域を対象に90日間の一時停止を発表した。台湾も対象に含まれる。この「相互関税」発動を巡って中華民国政府はすでに、米国との関税引き下げ交渉を行うのと並行して、台湾の民間企業と緊密な連携を図る方針を固めている。政府の政策と産業の需要のずれをなるべく減らすことで、台米の経済・貿易関係を取り巻く環境がどのように変化しようとも柔軟に対応できるようにすると同時に、変動する国際情勢の中で台湾の産業が持つ優位性を維持することを目指すのが狙いだ。
頼清徳総統は今月6日、トランプ米大統領が「相互関税」の発動を発表したことを受け、ただちに国民に向けた談話を発表し、台湾の五大戦略の一つとして、頼総統と行政院の卓栄泰院長(首相)が手分けして台湾の産業界の声に耳を傾け、問題解決に向けて迅速に対応していく考えを明らかにしていた。
行政院の卓栄泰院長は10日、早速、「産業界の声に耳を傾ける旅」をスタートさせた。最初の訪問先に選んだのは台湾北部・桃園市にある経済部産業園区管理局中壢産業園区だ。なお、11日には頼清徳総統が経済部産業園区管理局産業園区環境保護中心(台中市南屯区)を訪れ、台中市工業区(工業団地)に入居する企業20社余りと意見交換を行うことになっている。
卓栄泰院長は、経済部の郭智輝部長(経済相)、財政部の阮清華政務次長(副大臣)、それに経済部職員らとともに10日、中壢産業園区を訪れ、桃園エリアを拠点とする企業が米国の「相互関税」発動によって受ける問題やニーズなどについて理解を深めた。
卓栄泰院長は、産業界から提示された実務上の問題に耳を傾けた上で、「経済の安全保障はすなわち国の安全保障であり、政府には肝心のタイミングにおいて全力で企業を支援する責任がある。雨の日に傘をたたまないだけでなく、むしろ傘を大きく広げ、産業のセーフティネットを拡充する責任がある」と強調した。
経済部によると、1回目となった今回の座談会では、米国の「相互関税」発動予告に対応するために政府が講じる支援策について詳しく説明した。この支援策は、9大分野、20項目の措置、総額880億元(約3,850億日本円)からなるもの。経済部は輸出向け融資の優遇保証の強化、中小・零細企業向けの融資強化、研究・開発と転換への助成、海外受注の獲得支援などを通して、企業とともに問題解決に取り組んでいきたい考え。
この「産業界の声に耳を傾ける旅」1回目の座談会には、桃園市の張善政市長、立法委員(国会議員)の呂玉玲、林月琴、涂權吉、邱若華、郭昱晴、魯明哲の各氏が出席した。今後、台中、彰化、高雄などでも同様の座談会を開催する予定で、政府としては産業界と連携し、具体的な政策や措置を講じることで台湾企業がこの苦境を乗り越えられるように支援し、より強靭性と競争力を持った国づくりを目指す。