2025/04/26

Taiwan Today

経済

改良重ね“おいしさ”増す「台湾米」(上)

2011/11/18
南投県草屯鎮の水田で栽培されるイネ。(徐世栄撮影、中華民国交通部観光局提供)

台湾の米作りの技術は、質の良い米を追求して常に進化している。現在の米は、日本から導入された当時の品種ではなく、ほとんどが台湾の農家の手で独自に改良された品種である。昔あった日本から持ち込まれた「蓬莱米(ジャポニカ米)」と「在来種(インディカ米)」のみの分類は、すでに変わってきている。

米にはさまざまな分け方があるが、まず大きな特徴からみて、インディカ米(長粒種)、うるち米(短粒種)、もち米の3種に分けられる。外見から、もち米は丸いものと長いものに分けられる。2種類とも白色不透明であるが、丸いものはふっくらとして米粒は短く、長いものは細長い形をしている。炊くとやわらかく粘り気があり、酒の醸造や、もち菓子、八宝粥(8種類の食材を使ったデザート感覚の粥)や中華ちまきに用いられる。

日本は台湾を植民地としてから、それ以前から台湾で栽培されていたインディカ米を「在来米」、つまりもともとあった米と呼んだ。日本人は当時、台湾を日本向けの食用米の供給地とする方針で、台湾から毎年大量の米を輸入した。ただ、日本人は普段から粘り気がある軟らかいうるち米を食べていたため、台湾の在来米にはなじまず、日本からイネを導入して台湾で栽培することになった。

当時、台湾で栽培されている米と日本の米を区別するため、「蓬莱仙島」の名称のあった台湾で生産する日本米を、「蓬莱仙島の米」という意味で「蓬莱米」と名付けた。そして「うるち米」は「蓬莱米」、「インディカ米」は「在来米」と呼ばれるようになった。今日、台湾の稲作技術は高いレベルにまで発達。現在食されている米は、日本から導入された当時そのままの品種ではなく、大多数が台湾の農業従事者が品種改良したものなのである。

米はまた、精米加工の程度から、玄米、胚芽米、白米(精白米)の3種類に分けられる。もみ殻を脱穀しただけの「玄米」、脱穀した後に胚芽が残るよう精米したものを「胚芽米」、ぬかを完全に除去したものが、多くの人が普段食べている「白米」である。食感は白米がおいしいとされるが、栄養の点からは玄米が最も完全な形で米そのものの栄養を残し、たんぱく質や脂質、繊維、ビタミンB1などがより豊富に含まれる。胚芽米は玄米と白米の中間に位置する。

以下、台湾で栽培されている主な品種を3回に分け紹介する。

台南11号―生産量は最大、加工次第で自由自在に変身

国内で最大の栽培面積を誇るのは「台南11号」で、市販の米として最もポピュラーな品種である。行政院農業委員会のもと農作物の試験や改良に取り組む農業改良場の後押しで、パンやまんじゅう、クッキー、ケーキなどの焼き菓子への応用も進み、どんな役もこなす、米の中の名優だ。現在最も良質の米とされる「台粳9号」と質・食感ともに遜色(そんしょく)なく、香りと弾力性に富むため、すし飯や弁当の飯に適している。葉と穂がともにいもち病に強い上、倒伏に強く、脱粒性が低いなどの長所から、栽培面積最大、生産量最多で国内栽培のイネをリードする品種だ。栽培地域は全土に広がり、南部と花蓮・台東地方が最多となっている。

インディカ米―体重管理に最適のヘルシー米

長い形状から台湾では「長米」と言われ、粘り気なくあっさり、軟らかく甘みがある。食後も腹部の膨張感が少なく、スタイルにこだわる人に適している。世界では台湾と日本だけがうるち米を好むとも言われ、その他の米食地域ではほぼすべて、このインディカ米が食べられている。うるち米より長く、やや固めで、タイ料理のレストランなどで使われている。粘り気がないため炊くとパラパラと粒ごとに分かれる。
たんぱく質を豊富に含むほか、さまざまな病虫害にも強いことから、栽培中にも農薬を多用する必要がない。チャーハンに最適のインディカ米は、硬めの性質から炊く前に1時間ほど水に浸けるのがよい。
特筆すべきは、インディカ米はうるち米とカロリーは同じだが、アミロースと繊維がより多く含まれ、グリセミック指数(GI値)が低いことである。つまり、消化と血糖値の上昇が緩やかなため、インスリンの分泌が抑えられ、体重管理中の人にはよい選択肢といえる。

台中192号―優れた貯蔵性

「台中92号」は貯蔵性に優れた品種で、室温で4ヶ月保存したものでも、低温保存した台粳9号より質がよいとも言われ、人気がある。
「台中92号」は、味よく収穫高が多く、いもち病や害虫のウンカに強い「台14号」と、良質で収穫高が多く、いもち病と倒伏に強い「台8号」を交配して開発された1999年の品種。このため、収穫高が多く良質で、風味もよく、倒伏やトビイロウンカ、ヒメトビウンカ、いもち病に強いという長所を持つ。ただ、二期作目では耐寒性がやや落ちるため、一年のうち遅い季節の栽培にはあまり適さない。
粒はふっくらとして、つやと透明感がある。炊くと甘くおいしく、農家にも消費者にも人気がある。主な栽培地は新竹県芎林郷、雲林県虎尾鎮、花蓮県鳳林鎮など。

台中194号―香りよし味よしの才色兼備

17年をかけ改良された台中194号は、冷めても香りがよくもっちりした歯ごたえの残る品種。米を愛するお母さんたちの中で、おいしくて優れた貯蔵性の台粳9号と、台湾の人が好む芋の香りのする益全香米(台農71号)を合わせて炊く人は多いが、そんな人々のために開発された品種が台中194号だ。台中農業改良場の「米博士」こと許志聖氏がリーダーとなって、17年間の研究とテスト栽培を経て、ついに技術の壁を破り、この品種が生まれた。株の形状がよく、倒伏に強く、貯蔵性に優れ、いもち病やヒメトビウンカやセジロウンカにも強い。
米粒はつやと透明感があり、炊くと香りがよく、軟らかく粘り気があり、全体的には台粳9号を上回るほどとも言われる。
栽培地は台中の霧峰、大安、彰化県の埔塩、花蓮の玉里など。

(中)(下)に続く。

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