フランスのミシュラン社が発行する様々なガイドブック、ミシュランガイドのうち、台湾北部・台北市を対象としたレストラン・ホテルガイドは4月10日に発表される。同社はそれを2週間後に控えた27日、コストパフォーマンスで評価する「ビブグルマン(Bib Gourmand)」の一部を先に発表した。今回、「ビブグルマン」に選ばれたのは昨年より2店少ない34店。27日には今年新たに選ばれた12店が明らかになった。
12店のうち2店は過去に他の格付けでミシュランガイドに選ばれたことはあるが「ビブグルマン」では初めての店。10店はミシュランガイド全体で初めて選出された店。この合計12店のうち多くは台湾料理のレストランとめん料理の店。また、歴史ある北京料理の店、雲南料理の店、浙江料理の店も選ばれた。台湾料理と関係があるのは6店。料理評論家は、そのうちのいくつかは台北の人たちにも人気の店で、今回の「ビブグルマン」が地元の見方と一致した部分だと指摘している。
昨年の「ビブグルマン」は、人々をナイトマーケットで食べられる廉価なB級グルメに導く効果があったが、今年はナイトマーケットや屋台の料理は選ばれず、店舗を構える店だけが選出された。しかしそこには本来B級グルメであるはずの牛肉麺を、こだわりの高級料理として提供する店もある。このことから今回は、ミシュラン社が台湾のB級グルメでもハイクラスな料理に出来ることに気付いたことが分かるのだという。
27日に明らかになった12店は以下のとおり。
●台菜餐庁阿城鵝肉(初選出)
中山区にある台湾料理レストラン。本店は台湾北部・新北市土城区にあり、中山区の店舗は2010年に出来た支店。人気のガチョウ肉は台湾中部の雲林県産で、煮たものと燻製にしたものの2種類がある。燻製味が看板料理。
●阿国切仔麺(初選出)
大同区のめん料理店。寧夏市場の脇にある。店名は台湾の伝統的な主食である「切仔麺」から付けられた。油麺(ラーメンなどで使われる一般的な黄色いめん)にもやし、自家製の「油葱酥」(刻んだエシャロットを油で揚げたもの)を合わせる。スープは毎日、数時間かけて豚骨から取る透明な出汁で美味。
●川菜館四川呉抄手(他の格付けでミシュランガイドに選ばれたことがある)
大安区にある四川料理レストラン。60年あまり前に小さなめん料理の店からスタート。看板料理の「紅油豬肉水餃」はブタの後ろ足のもも肉を特製のギョーザの皮で包んだ水餃子。激辛の油を絡めて食べる。メニューは四半期ごとに調整される。
●北平菜館都一処(初選出)
信義区にある北京料理のレストラン。60年あまりの歴史と豊富なメニューを持つ。料理は全て現在の店主の曽祖父の弟で、清の慈禧太后(西太后)のコックだった人が伝えたもの。サクサクの食感ながらジューシーな「炸丸子」(揚げダンゴ)はブタの後ろ足のもも肉を刻んで作ったもので、顧客が必ず注文する一品。
●滇菜館人和園(初選出)
中山区にあるレストランで、1956年から常に正統な雲南料理を提供してきた。一部の料理は準備に大変手間がかかる。最も人を驚かせるのは「豇豆醸百花」。「豇豆(ササゲ)」にエビのすり身が包まれており、食材の対比と何層もの深みのある味わいが楽しめる。
●売麺炎仔(初選出)
大同区のめん料理店。古い集合住宅の1階にあり、80年以上の歴史を持つ。油麺やビーフンを買い求める人たちで常に列が出来ている。豚骨を煮込んで作ったスープの汁そばにブタの内臓や鶏肉を加えてもいいし、甜麺醤(中華甘みそ)を絡めた「乾麺」(汁無しのそば)を選ぶのもいい。
●台菜餐庁女娘的店(初選出)
士林区にある台湾料理レストラン。内装は1950年代の農家を模している他、店主の故郷の記念品を装飾に用いるなど代表的な家庭料理であることをアピール。看板料理の「古早味烘肉」はその日に食肉加工された黒ブタ肉を使用しており、きめ細やかな肉は口に入れたとたんにとろけるという。
●江浙菜館栄栄園(初選出)
大安区にある浙江料理レストラン。シェフはここの料理長を務めて30年。全てのレシピは1965年のオープン当時のままだという。顧客が必ず注文するという「烤排骨」はブタの骨付きアバラ肉をオニオンスープに浸け、肉が自然に骨から離れるまでとろ火で6時間煮込んだもの。「光餅」(小麦粉を練った生地を丸めて焼いたもの)に切れ目を入れ、肉を挟んで食べれば絶品。
●印度餐庁番紅花(他の格付けでミシュランガイドに選ばれたことがある)
士林区にあるインド料理店。店内と壁、柱は白の漆喰で仕上げられておりシンプルで上品。大きな掃き出し窓は自然光を十分にとり込んでいる。看板料理は「murgh Kerala」と「murgh kothmeri」。店内の一角ではコックがナンを作っており、客はその場で注文が出来る。
●台菜餐庁欣葉小聚今品(初選出)
南港区にある台湾料理レストラン。老舗「欣葉」の姉妹店でメニューは台湾の円卓料理。油と塩分控えめがセールスポイントで小型のグループや家族の食事会にぴったり。看板料理の「青龍皮皮挫」と「蛋煎干貝絲瓜」はいずれも他では味わえないオリジナルメニュー。
●麺館天下三絶(初選出)
大安区にあるめん料理店。一般の狭いめん料理店と異なり、店内は高級で上品な空間になっている。料理の味も非凡で、看板料理の「天下三絶牛肉麺」は牛のテール、2種類のすね肉、アキレス(すじ)の合計4つの異なる部位を使用。一度に様々な肉質を味わえる。
●台菜餐庁義興楼(初選出)
文山区にある台湾料理レストラン。1938年創業で現在は4代目が経営しており、高品質ながら低価格のレトロな料理にこだわっている。看板料理の「金銭蝦餅」はエビの具とブタの後ろ足のラードを包み、油で黄金色になるまで揚げたもの。ほおばる度に中の汁が飛び出し、口中においしさが広がる。
ミシュラン社は1955年から「ビブグルマン」で、大衆価格ながら高品質なレストランを推薦している。推薦されるレストランは、一定の消費金額内で十分なレベルの料理が3種類食べられることが条件。都市によって消費水準が異なるため、欧州では36ユーロまで。米国では40米ドルまで。日本の東京では5,000日本円、台北市では約1,000台湾元(約3,555日本円)を上限としている。